なかったことにしてください  memo  work  clap



腕の中にすっぽりと納まる吉沢さんの髪を俺は愛おしい気持ちで撫でる。気持ちがつながった
ことの実感をこうやって、一つずつ確かめるんだ。
 俺が吉沢さんを想う以前から吉沢さんは俺のことを考えていてくれた。その事実は俺には
信じられなくて、目を閉じてしまったら次の瞬間、全てが消えてしまうんじゃないかと不安にもなる。
 だから自分がこの現実を信じられるまで、俺はこうやって吉沢さんを抱きしめて、嘘じゃないんだ
って言い聞かせてやるんだ。
 俺がそんなことを考えながら、吉沢さんを抱きしめていると、胸元で吉沢さんが身をよじった。
「・・・深海、痛い。そんなに強く力入れなくても、逃げたりしないから・・・」
「す、すみません。なんだか、こうしてないと、不安で・・・今、吉沢さんを離したら全部夢だった
なんてオチになりそうで、怖いんです」
「ばか、こんなバカな夢がそうそうあってたまるか」
「こんなばかげた現実もそうめったにないと思います」
「・・・そうかもな。俺たち2人でばかげた夢でも見てるのかもな」
「2人で見てるなら、それでもいいですけどね、俺は」
ホント、お前ってバカだな。そう言って吉沢さんは俺を見上げて笑った。
 俺もつられて笑った。多分、鼻の下なんて伸ばしながら。
それに比べて、吉沢さん、なんでこんな綺麗な顔してるんだろう。おまけに肌だってつやつや
してて、これで男なんだもんなー。詐欺なのか、俺の頭がイカレてるのか。
それにしても、吉沢さんのまつ毛、長いな。そんなことを考えていたら、その長いまつ毛が動いて、
しっかりと下まつ毛と重なった。
 思わず、ゴクリと生唾を飲みたくなる。
あの時みたいに、暴走して無理矢理奪ったりしなくても、ちゃんと手に入るんだ。
 もう、何のためらいもない。俺は両手で頬を挟むと唇を重ねる。やわらかい感触に体が
反応する。
 やべえ。今の俺、すげえ危ねえ。
こっちが口を開くと、つられて口を開いてくれた。俺はそこから吉沢さんの舌を絡め出す。
舌の先を吸い上げて、その隙に上あごを舐めてやる。軽く回されていた手の力が強くなる。
支えていないと立てないのだろう。俺はさっきよりも密着した体をもっと引き寄せて、片足
を吉沢さんの両足の間を割って入れた。俺の脚にも、吉沢さんの脚にも、お互いの熱が伝わって
いる。
 歯の裏と舌の上を何度も舐めあげて、口を離すと、溢れ出た唾液が吉沢さんの口を伝ってシャツ
に零れ落ちた。
「やべえ、すげえ色っぽい」
「お前も、充分色っぽいよ」
過呼吸気味になりながら吉沢さんが呟く。
 そこからは、お互いスイッチが入ったように、お互いを貪った。俺が吉沢さんのネクタイに
手を掛けると、同じように、吉沢さんが俺のネクタイを解く。
 シャツを乱暴に脱ぎ捨て、あっという間に2人とも上半身裸だ。俺は嘗め回すような視線で
吉沢さんの裸を見た。
「ばっか、そんなに見るなよ。こんな裸、見てもどうってことないっだ・・・ろ」
そんな呟きを無視して俺は吉沢さんの腰を抱き寄せ、薄ピンクに輝いている突起を口に含む。
「あんっ」
「うわ、すっげーいい声で啼くのな」
「ばか」
「男でも、感じるとすっげー立つんだよ、ココ」
反対の突起は手で軽く摘みあげる。あっという間に堅いしこりになった。その感触を掌で
味わっていると、不規則な息の下から吉沢さんの小言が飛んでくる。
「そんなに、する、な・・・あんっ」
もはや威厳も何もない声だけど、俺には充分腰にキてる。あの吉沢さんを、こんな風に
できるなんて、信じられない。1人の夜、何度か頭の中でこの人を弄んでしまった。女を想像しながら
気が付くと、その妄想はするりと吉沢さんに摩り替わって、俺の中の吉沢さんは何度もいい声で
啼いていた。そんな妄想よりも、もっと濃く、甘く、吉沢さんが俺の手の中でよがる。
 俺が胸の突起で遊んでいるとすっと手が伸びてバックルをカチャカチャ外す音がした。
するりと手が入ってくる。めったなことじゃないと他人が触ることのない部分ってどうして
こうも敏感なんだろうな。俺は内股をなぞられただけでビンビンにきてしまった。
「吉沢さん、ずるいよ・・・」
俺も同じようにベルトを外すと、下着と一緒に脱ぎ降ろしてやった。むき出しになった下半身を
隠すように、背中を向ける。
 吉沢さんって、背中もそそるよな。舌でべろっと背中を一筋舐めてやったら、仰け反って、
倒れそうになった。
「変態、深海」
「だって、吉沢さんの体が厭らしいんだもん」
俺は吉沢さんを抱き上げてベッドに向かった。人生二度目の「男をお姫様抱っこ」だ。吉沢さん
は恥ずかしそうだったけど、ベッドに運ぶまでに何度もキスをして、ベッドに雪崩れ込む時には
お互い堅くなったモノを握り合っていた。
 扱きあって、先っぽが濡れそぼった。先に動いたのは吉沢さんで、俺の股間に顔を埋めると
躊躇いもなく舐りあげた。
「はうっ・・・」
堪らず声が漏れる。
「すっげえ・・・すげえ、気持ちい」
吉沢さんの口調から男は始めてらしいけど、とてもじゃないけど、そこらへんの女にしてもらう
フェラチオより、ずっとか気持ちよかった。なまじ男だから、どこが気持ちいいとか
分かるのかもしれない。
 筋裏を何度も舌の先で丁寧になぞられて、最後には袋ごと口の中に納まった。口の中で
タマを転がされる。自称「セックス大好き」だった大学の時の彼女にはされていたが、あまり
そこまでしてくれる女はいない。テクニックとして知らないのか、単に嫌だったのかは分からない
けれど、久しぶりの感覚に感動すら覚えた。
 部下を叱り飛ばすあの吉沢さんが俺の股間で、こんな淫らな顔してフェラチオなんてしてる。
実際の感覚の気持ちよさと、高揚した感情で俺は一気に果ててしまいそうになる。
「ま、待って、ダメ・・・それじゃ俺、すぐイっちゃうよ」
そう言った俺を、口に咥えたまま吉沢さんが見上げる。すげえ厭らしい顔で。
「いい・・・よ。出しても」
口を離して、にやっと笑って一言そう言う。
「ああっ、もうっ」
堪らなく、俺は乱暴に吉沢さんの下半身を引き寄せると、同じことをしてやった。既に吉沢さんの
ペニスも先走りでべたべただった。
「どう?ねえ?感じる?」
擦りあげたり、亀頭の割れ目を舌でなぞりながら、俺は聞いてみる。
「ふ、深海・・・ダメだって・・・」
俺のペニスを握り締めながら、吉沢さんが悶える。なんだ、この興奮。俺はたまらなくなり、なりふり
かまわず、扱いてやった。
 吉沢さんの呼吸がどんどんと速くなる。それに伴い甘い息も、鼻に掛かる声も、大きくなった。
「ああっ・・・だ、め・・・だ・・・ふかみ・・・それ以上・・・」
「それ以上?」
「それ、以上、したら・・・ああ、ダメ・・・あうっ」
俺は更に早く扱いてやる。
「ああっ・・・ん、んっ」
「出してもいいですよ、ね?ほら・・・」
「やっ、だっ・・・ダメだよ・・・はぅ」
「いいですよ、ほら、出せよ、吉沢さん」
先っぽを口に含んで、舌の先を筋裏に宛がう。手の力をぐっと強めると、もっといい声で啼く。
「はあう、ダメ、ああ、ああ、ふかみ、出ちゃう、イっく・・・」
「いいよ、出しても。俺、ちゃんと受け止めてあげるから」
「・・・ばか、はぁ・・・。あっ」
相変わらず吉沢さんは俺のペニスを掴んだまま喘いでいる。ああ、たまんねぇ。
「ねえ、一緒に、出しても、いい?」
俺の股間の下で高揚した吉沢さんの顔が垣間見える。その顔が俺の質問にコクリと頷く。
なんてイヤラシイ顔してるんだ、この人は。
 それを思うだけであっという間に果ててしまいそうになる。俺は舌を添え、先ほどよりも
強めに扱いてやった。ピッチが上がると、同じリズムで吉沢さんのかすれる声が聞こえてくる。
「あ・・・もう、だめ、い、く・・・」
吉沢さんはそれでも、懸命に俺のモノを扱いて、小さく咥えてくれる。
「はぁ、お、俺も、出ちゃうよ・・・」
「ああっ」
「あう」
俺たちは短く叫んでお互いの白濁をお互いの口の中に吐き出した。
肩で息を吐き、俺は起き上がると、口に広がった吉沢さんの精液を吉沢さんに見せ付けるように
口から吐き出して、手の上に乗せた。
その行為を吉沢さんは恍惚とした表情で眺めている。口から液体があふれ出そうになるのを
俺は手を添えで吐き出させた。そうして、二人分の液体がぐちゃぐちゃに混じった俺の指で、
俺は吉沢さんの割れ目をやんわりと摩ってやる。そして十分に入り口が滑らかに濡れたことを
確認すると、一気に人差し指を中へと突っ込んだ。
 ぬるっとした感触の後に、俺の指はきつい圧迫を受けながらも確実に奥へと侵入する。
 吉沢さんはああ、とかうう、とかうめきながらも、俺を拒むつもりはないらしく、必死に
シーツを掴み続けている。
 その健気な姿に俺はまた興奮した。
「吉沢さん・・・そんなに俺を悩殺せんといてください。俺、タンクが空っぽになっちまうまで
出しちゃいますよ」
「馬鹿っ、へんたいっ」
「いいです、馬鹿でも変態でも」
言いながら俺はお互いが吐き出した液でべたべたになった中指も、もう1本と中へ進めた。
吉沢さんの中は潤滑剤もたいして役に立たないくらい、俺を拒むようにきつく締めあがっていた。
「吉沢さん、もうちょっと力抜けます?これじゃ、俺の入らないよ」
「む、無理・・・」
気持ちいいのか気持ち悪いのか全然わからない表情で吉沢さんがうめく。
俺は二本の指を鉤状に折り曲げ、周りの圧迫に負けないくらい引っ掻き回す。
「や、あぁ・・・あっ」
そうして、何度かかき回していると、ある一点で吉沢さんがひどく反応するので、俺はその
ポイントをゆっくりとアクセントを付けておしてやる。
吉沢さんの嬌声と共に前の突起物がぐんと顔を持ち上げてくるのを確認して、俺は3本目の指を
隙間に引っ掛ける。
「はああぅ」
さすがに3本目の指は奥まですんなりとは入ってくれず、俺は力を抜かせるために、片方の手で
袋をやんわりもみしだく。そして、お返しといわんばかりに、吉沢さんがやってくれたことを
してやった。つるんと口の中に入ってきた楕円状の卵を舌を使ってころころと口の中で転がす。
「や、ダメ・・・深海、汚いよ・・・はぅっ」
その割には嬉しそうになくんだよな。そして思った通り力が抜けたらしく俺はその隙に3本目を根元
までねじ込んでやった。
わずかに空いた隙間からネチネチといやらしい音が聞こえてくる。なんて卑猥な感触。俺はかつて
経験したことないほどの興奮を覚えた。
「ねえ、どう?気持ちいい?俺の指、感じる?」
「ああっ・・・うん・・・。ちょっと痛い・・・でも、深海なら、いいよ」
「よ、吉沢さんっ・・・」
男と体験したことなんてないから、他に比べ様もないし、吉沢さん意外の男なんて、気持ち悪い
だけだと思うし、吉沢さんだから、こんなに興奮するんだとも思うのだけど、とにかく、吉沢さん
を目の前にして、極度の興奮で俺は自分がサルかサル以下になったかの様に、タカが外れて
しまったようだ。
刺さった3本の指を一気に引き抜くと、間髪を置かずに、今度は自分のものに手を掛けて、
吉沢さんを四つんばいにすると、そのまま一気に吉沢さんを貫いてやった。
「あうっ」
「はぁ・・・よ、よし、ざわ、さん、きついよ・・・」
吉沢さんの中で脈がドクドクと流れているのを感じる。これは俺の興奮なのか、吉沢さんのモノ
なのか、わからないくらいの圧迫と密着で、お互いが一つになってしまったような気分だった。
「ふ、深海・・・俺・・・」
「どう、したんです・・・?」
俺も吉沢さんも肩で息を吐き出しながら苦しみと、その向こうにある快感を共有していた。
「痛い・・・ですか?」
俺の問いには首を横に振った。
「はぁ・・・はぁ・・・なんか、俺・・・すごい、変・・・」
「どうか、しました?・・・辛いなら、辞めましょうか・・・」
「・・・辞められるのか?」
「・・・それを言われると辛いですけど、吉沢さんが辛いなら、辞めます」
そこまで言うと、吉沢さんが吹き出して笑った。
「はぁっ・・・お前、すごいかわいいヤツ。こんな俺、なのに・・・」
「なんですか、それ..」
「俺・・・はあ・・・はぁ・・・お前の上司だし、男だし・・・だけど・・・」
「だけど・・・?」
「はぁ・・・はぅ・・・俺、お前のこと、すごく・・・好きだ」




<<8-2へ続く>>








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