「後戻りできなくてもいいんだな?」
「真野?!」
「・・・・・・せっかくお前が55キロになって、覚悟できるまで待ってやろうと思ってたのに。
もう、なしとか言わせないからな」
「ま、真野っ、ちょっと!?」
真野は亜希の身体をひょいと持ち上げると、直ぐ後ろのベッドの上におろした。真上から
見下ろされて、亜希の身体がびくんと震える。
「わかってんのかねぇ・・・・・・振り回されてるのはこっちなんだよ」
「ひゃあっ」
亜希の首筋を唇で辿りながら真野は意地悪そうな、それでいて余裕のなさそうな動きをした。
きっと亜希には分からないだろう。自分がどれだけ辛抱強くて、我慢してきたかなんて。
亜希はドS野郎と罵ってくるけれど、このストイックなまでの辛抱強さはMなんじゃないかと
真野は自嘲気味に笑った。
「4年も待たせておいて、最後にそんなオアズケの喰らい方ってあると思う?」
「オアズケって・・・・・・」
「痩せたかと思えば、リバウンドって。俺の事拒絶してんのかと思った」
「ち、違う・・・!そうじゃなくて」
「いい、いい。分かってる。お前は後先考えることなく甘いものに飛びつく馬鹿だって事
はよく分かったから」
「真野っ」
真野は亜希のTシャツの中に手を突っ込むと亜希が躊躇っている間にそれを脱がしてしまった。
現れたのは、4年前とは別人のほっそりとした身体。色の白さが際立って、綺麗だと真野は
素直に思った。
指を滑らせて亜希の鎖骨から腹筋まで降りてくる。くすぐったくて亜希は身体を捩った。
「ちょ、真野!待って!」
「もう待たない。待つとろくなことがない」
「お、俺、55キロまで減ってないし」
「どうせ一回は減ったんだろ。もういい」
「ええー!」
真野は亜希が混乱しているうちにさっさとハーフパンツにも手を掛けて、ついでにパンツも
全部脱がしてしまった。
「ちょ、ちょ、ちょぉー!!無理!ヤダ!なんで俺一人裸なんだよ!恥ずかしいことすんな
馬鹿真野〜」
情けない声で叫ぶと、真野は勢いよくTシャツを脱ぎ捨てた。
「俺も脱げば恥ずかしくないのか」
「・・・・・・っ!!」
目の周りが熱い。恥ずかしいのと照れと、それから多分これから起きることへの期待と不安。
亜希は思わず自分の股間を手で押さえて隠した。
真野がその手を掴む。亜希はその手をどかされないように必死に押さえた。
「見たら駄目〜」
泣きそうな声になって、亜希は首を振った。殆ど何にもされてないのに、これだけで勃起
してるなんて、見られたら死んでしまいそうだ。
「亜希、怖がんなよ」
「だって・・・」
「怖くしないから」
「い、痛くしない・・・・・・?」
「痛くしないかどうかは、保障できないけど」
「!!」
涙目で真野を見ると真野は亜希の目じりに小さく唇を落とした。
「その前に気持ちよくさせてやるから」
耳たぶを弄られて、亜希は身体の力が抜けた。その隙に真野の手が亜希の股間を隠していた
手に伸び、あっけなく亜希の牙城は崩れてしまった。
「やる気あるじゃん」
「〜〜〜〜〜!!」
真野にいきなり掴まれて、そしていきなり扱かれた。
「ああああっ!!」
亜希は、酸欠の虫みたいにバタバタと手を動かして抵抗した。
「気持ちよくない?」
「違っ・・・!待って!待って!待って!物には順番があって!いきなりそんなの・・・!」
「刺激が強すぎ?もっと強くなるから、覚悟しとけ」
涙目になりながら、ペニスから伝わってくる衝撃に亜希の中はぐるぐるになっていた。
もう、訳がわかんない。俺と真野、何してんの?せ、せせ、セックスって!何すんの!
どうすんの!俺、気持ちよくって、アンアン声上げちゃったらどうすんの〜〜〜!!
心の声がまたもや駄々漏れになって、口からはみ出した声に、真野がクスリと笑った。
「どうぞ、好きなだけアンアン言えば」
「・・・・・・!!」
馬鹿!俺、馬鹿!
亜希は慌てて口を押さえたが、今度は口の端から「ああっ・・・」と声が洩れた。
真野は亜希のペニスをリズムを変えながら扱いて、空いた手で身体を引き寄せた。
「気持ちよくなってきた?」
「・・・・・・」
恥ずかしさでどうかなりそうだけど、確実に気持ちはいい。他人に扱かれるなんて初めて
の経験で、自分が想像していたものを100歩くらい飛びぬけていた。
「き、気持ち、いいけど・・・無理!」
「何が無理なんだ」
「だって、俺・・・」
真野の手の中でイってしまった自分を想像しただけで、失神してしまいそうだ。
「だって?」
「よ、よく考えてみろよ・・・・・・俺と、真野だよ?!・・・・・・っんん」
さっきまで喧嘩してて、いや4年前からずっと罵り合ってて、たまにはキスとかもしたけど
友達なのか腐れ縁なのか分からないような真野に、こんな姿見られてるなんて。
「いいじゃん、別に。俺達そういう仲なんだろ?」
「!!」
「俺は、亜希とやりたい。お前の事抱きたい」
「い、一々言うなって」
「何回でも、言ってやるよ」
「べ、べつに、言わなくてもいいから!」
「『口で言わないお前が悪い』っていったのはお前だからな」
「やだー!止めて〜!」
亜希が耳に手を押さえて、塞ごうとすると、真野はその手を除けて耳元まで唇を近づけた。
「なあ、俺のも触って?」
「!!」
真野が下半身を亜希に擦り付けてくる。ジーパンの上からでも、その膨れ上がった形が
はっきりと伝わってきた。
「すげえ、興奮してるんだけど?」
「・・・ま、の・・・・・・」
亜希が手を伸ばすと真野はハスキーな声で亜希の名前を呼んだ。
「亜希、好きだ」
「・・・・・・!」
その言葉に何があるんだろう。たった5文字の台詞が亜希の中を駆け巡って、脳天まで痺れ
させた。
「あっ・・・ま、の!真野!・・・俺・・・・・・」
きゅんと胸の奥が鳴った気がする。まともに気持ちを伝えられたのは、多分初めてだ。
こんなときに、その台詞を言うなんて、真野はずるい。
恥ずかしさも殴り捨てて、向こう側の世界に行ってしまいたい気分になる。
唯でさえ、飛び越えないでいられるのがこの恥ずかしさだけなのに、真野の告白で恥ず
かしさも麻痺してしまいそうだ。
真野は自らジーパンをずり下ろすと、固くなったモノを亜希に握らせた。
「はぁん・・・」
自分のものを扱かれて、真野のデカイブツを手の中に収めて、亜希は自分の置かれた状況
に益々パニックになりかけていた。
「頭、おかしくなりそうなんですけどぉ」
半泣きになりながら真野に訴える。真野は額に汗を浮かべながら、男前の顔を歪めた。
「イってもいいよ」
「・・・・・・そんなの・・・・・・」
「無理じゃないだろ、いけって。それとも一緒に、いく?」
「!!」
そんな高度なことを俺に求めないで欲しい、と亜希は真野に目で訴える。自分の事だけで
手一杯なのに、真野のブツの事まで心が配れない。
真野は苦笑いして亜希の唇にキスを落とした。
「そこまで期待してないからいい」
「・・・・・・」
「いきたいなら、いつでもいけよ」
真野は扱いている指の力を強くした。先端から飛び出した液体を指に絡めて、ぬるぬると
擦りつけたり、押されたり、さっきよりも刺激が強くなっていく。
「ああ、ああっ・・・・・・」
イきたい。でも、今までの関係を飛び越えるにはもう一押しして欲しい。
「な、何回でも・・・」
「何?」
「んんっ・・・何回でも、言ってくれるってホント・・・・・・」
「ああ?」
「さっきの、もう一回、言って・・・・・・俺の事・・・・・・」
狙って言ったわけじゃない。亜希の涙目の瞳に真野も負けた。
「亜希、好きだよ。だから、俺の手でいって」
「ああっ」
真野に言われた瞬間に、亜希は一気に上り詰めて、それから真野の掌にたっぷりと熱い液
を放出していた。
「やっと、来たな」
真野はぐったりとした亜希を見下ろしながら、額に張り付いた髪の毛を指ですくった。
「・・・・・・俺、どうなっちゃうんだー」
「まだまだ、甘い」
「ええっ」
「それに、お前はとりあえず増えた体重を55キロまで戻せ。続きはそれからだ」
「なっ・・・!」
真野はそう言って笑うと、亜希の唇をぺろんと舐めた。
「・・・・・・ホント、甘い」
俺も、お前も。真野は苦笑いで亜希を見下ろした。
これからどんな恐ろしいプレイが待ち受けてるのか想像すると引きつってしまうけれど
とりあえず55キロまで痩せるまでは危ない目には遭わないだろうと、変なところで高を
くくった亜希は一人ウフフと乙女チックに笑った。
「何?」
「別に〜」
大きな2人の一歩は、これから広がる世界の小さな一歩でしかないけれど、2人の関係は
まだまだのろのろと続いていくのだろうと思うと、亜希は幸せな気分で真野の頬に顔を
つけた。
2人が繋がるにはまだまだ時間は必要で、真野が実に辛抱強い男だという事を亜希が思い
知るのはずっと後のことなのだけれど、それはまた別のお話。
よろしければ、ご感想お聞かせ下さい
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