ベッドに向かう時間も惜しいくらい。いや、実際ソファの上でお互い絡まりながら、全裸に
なっていたら、ベッドじゃなくてもどこでもいいやって気分になった。
吉沢さんにもお返しにたっぷりとサービスして、グズグズに崩れてしまうと、吉沢さんも
相当どうでもいい感じになっていた。
「ここでする?」
なんて問いにも
「うん」
なんて素直に頷いちゃうくらい。
ソフトレザーが汗ばんだ身体で滑ったり張り付いたりして絶対気持ち悪いはずなのに、
吉沢さんはソファに埋もれたまま、浅い呼吸を繰り返している。薄目を閉じて天井を仰ぐ
姿が、まだ足りないって催促してるみたいだった。
首筋から顎へと遡って、追いかけてキス。舌を絡ませるとお互い吐き出した牡の匂いが
残ってる気がしたけど、お構いなく唇を吸った。
「ローションつけないと痛いですよ?」
「・・・・・・うん」
返事をしたのに、吉沢さんは起き上がろうとしない。俺の腰に手を巻きつけて、その手で
俺の背中の感触を楽しんでるみたいだ。
「うん、の意味が分からないんですけど」
「分かってる」
答えて、その手が止まる。徐に瞳を開いて俺を見つめると掠れた声で俺を呼んだ。
「深海」
「はい」
吉沢さんの目が妖しげに潤んで、俺を挑発してるみたいだ。
「ローション」
「はい?」
「持ってきて」
・・・・・・ちょっと、それ!反則なんですけど!
そんな顔で!そんなエロい顔で、そんな甘えたお願いしないでくださいよ!
腰の辺りの吉沢さんの手が俺の尻を撫でた。熱が戻ってくる。急に元気になりだした
俺のペニスが吉沢さんに当たって、吉沢さんの口が、小さく「はやく」って呟いた。
もって来るくらいなら、ベッドに行けって話なんだけどこう言う時の自分達の感覚って
つくづく麻痺してると思う。
寝室からわざわざローション持ってきて、皮のソファの上でセックスなんて、後で絶対
後悔するのに、なんで興奮してるんだろう。あれだ、ドーパミン?エンドルフィン?なん
だっけ、脳内麻薬?何でもいいや。
吉沢さんの腹の上にローション垂らして、人差し指でくるくると混ぜる。横から零れそう
になるところを、手ですくうとペニスを扱いた。
お互いまだまだ足りないみたいで、さっき出したのにもうこんなに硬くなっていた。
刺激でローションが温まる。指に絡みついたローションは、吉沢さんの孔へと移した。
「あああっ」
指を沈めると背中を仰け反らせて、その反動で片足がソファから落ちる。だらりと投げ
出された足が、誘ってるように見えた。
わずか半月ぶりのセックスなのに、どうも今日は違う。何が違うのかって言われると
自分でも説明が付かないけど、テンションが違うんだ。キス一つとっても、いつもより
深かったり、長かったり。吉沢さんの漏れる声が多かったり、目の合う回数が増えてたり。
お互いがお互いを欲してるっていう状態がいろんなことを引き起こしてる。
こうやって吉沢さんの中をかき混ぜてても、いつもなら、くったりしちゃう吉沢さんが
無理矢理俺の手を止めて起き上がるし。
「久しぶりで痛かったです?」
「ううん・・・そうじゃない」
「ん?」
「深海と、もっとくっつきたい」
吉沢さん何かに酔ってるとしか思えないんですが。
ソファに座らされると、その上に股を広げて吉沢さんが対面で座ってきた。ぎゅっと抱きしめ
合って、むき出しの尻を撫でる。
「そんなに広げると、ローション垂れますよ」
耳元で笑いながら投げかけると、
「こぼれないように塞いで」
なんて、また酔っ払いみたいな台詞がした。
「それじゃ、ご要望にお答えして」
また1本からスタート。あっという間に1本目を飲み込むと、吉沢さんの身体が小さく捩れた。
「まだまだ入りますよ?」
ローションまみれの指は大きな抵抗もなく2本目も咥えていった。
「ああっ・・・深海っ」
腰が揺れる。吉沢さんの硬くなったペニスが俺のに当たって、俺もその度びりびり痺れた。
2本の指で中の壁を押しながら、吉沢さんの反応を楽しむ。どこがいいトコかなんて分かり
きってるから、あえてそこをはずしながらじわじわと回りから攻めていると、吉沢さんの
掠れた声がした。
「深海・・・・・・やだ・・・」
「やだって、止めて欲しい?」
分かりきった意地悪をして吉沢さんを見れば、上気した顔が俺の顔に張り付いて首を振った。
「お願いだから・・・」
「うわー。吉沢さんのその台詞、すっごいエロい。すっごいいい」
素直に褒めると、指がぎゅっと締め付けられた。自分のプライドと快楽が戦ってるんだ、
きっと。年下のこんな馬鹿な男に全部晒すなんて、普段の吉沢さんなら絶対許さないだろう。
そう思うと、ちょっとは愛されてるんだろうなって気分になった。
お願いされたことが嬉しくて、いいトコを的確に指を曲げて押すと、腹に当たる吉沢さん
のペニスが更に硬くなった。
「ああっ!」
俺の首にしがみついたまま、吉沢さんの顔が仰け反る。後ろにひっくり返るんじゃないかって
慌てて反対の手で腰を引き寄せた。
汗ばんだ背中がソファに張り付く。吉沢さんの息が肩に当たった。
「やっぱり熱いですね」
「・・・・・・エアコン、つける?」
「そうじゃなくて、吉沢さんの中」
ぐりぐり指で教えると、あふっと息だか声だか判別付かないようなものが口から漏れた。
それから、俺の上で腰を上げて自分から指を抜いた。
「俺、熱いよって言っただろ・・・・・・もっと、教えてやるよ」
「え?」
吉沢さんが俺のペニスを捕まえて、ローションの手で23度扱いた。俺の方も一段と硬度が
増す。早く入れたいって思ってるのはどっちも同じらしい。
吉沢さんは先を急ぐように、自分の身体をそこへ持っていくと一気に腰を落とした。
「ああ、ああっ」
「うう・・・気持ちいい」
腰を落としたまま一拍休憩。ふうっと息を吐くと吉沢さんは自ら腰を上げた。
「はあっ・・・・・・ああ・・・あん」
腰を振る度、ソファがギシギシなって垂れたローションがソフトレザーの上を滑っていく。
吉沢さんは俺の首にしがみついた状態で、器用に腰だけを動かす。俺は、ウエストを軽く
支えて上下する腰の動きを大きくするだけだ。
吉沢さん主導のセックスは久しぶりで、それだけでクラクラしてしまう。本日2度目だと
言うのに、先は早そうだ。
「熱い・・・・・・堪んないよ、吉沢さんの中」
「俺も堪んなくいいよ。深海のココ」
ぎゅっと締め付けられて、ペニスがびりりと痺れた。
「いてて、そんなに締め付けないでくださいって」
吉沢さんは大して緩めもせず、そのまままた腰を振った。
今日はがんばれる気がするって言ったのは、間違いじゃなかった。フェラでいかせて
もらって、吉沢さんに乗っかられて腰を振られても、まだ元気。
だけど、乗られてるだけじゃつまらなくて、吉沢さんと繋がったまま、アクロバットな
姿勢を繰り返しながら、最後はソファに手を付かせて、立ったまま後ろから突いた。
腰をがっつり掴んでがんがん振ってると、いい加減やばくなって
「でちゃいそうです」
って半分叫びながら口走る。
「そんなに・・・ああっ・・・したら、うっ・・・・・・俺だって」
しがみついたソファが汗で滑る。吉沢さんは溶けるように上半身をソファに沈めてしまった。
掴むところがなくて、指がソファのレザーをカリカリと引っ掻く。そんなに引っ掻いたら
傷つくよ?大切なソファなのに。
背中に密着して、吉沢さんの手を引き寄せる。後ろから吉沢さんの手首を握って、固定すると
あとは、思いのまま腰を進めた。
ぱちぱちと肌とローションの弾ける音が、煌々と明かりの付いた部屋に響く。男2人の
セックスなんて普通の他人が見たら萎えること間違いなしなんだろうけど、今の俺にはこの
瞬間が興奮以外の何ものでもない。
吉沢さんと身体を重ねること、吉沢さんの熱さを知ること、二人同じ気持ちを共有すること
こんな幸せで興奮することって他にあるかよ!
「ああ・・・深海、もう・・・」
「俺もいきそう」
てか、もういくよ。吉沢さんの中に早く出したい。俺の熱さも知ってよ?
過去の男も、吉沢さんのトラウマも全部全部引き受けられるほど、器はでかくないかも
しれないけど、今とこれからの吉沢さんを愛してくくらいの器量は多分ある。
だから、吉沢さんも、俺のこと、ずっと見てて欲しい。時には今と同じくらいの熱さで。
「吉沢さん、死ぬまでずっと一緒にいましょうね」
「ああっ・・・深海」
「大好きですよ、あなたが」
その台詞に吉沢さんの中が一層熱くなった。俺も我慢できずに、短い息が上がる。
「ああっ、いく!」
「んん・・・・・・ああっ」
ぼとぼと・・・・・・。どくどく言いながら、吉沢さんの中に俺の液体が飛び出していった。
「はあっはあっ」
「大丈夫・・・?」
俺の下で呼吸を整えている吉沢さんに、背中をさすった。それから首の裏にたくさんの
軽いキスを降らす。
呼吸の合間で吉沢さんがくすぐったそうに身体をよじった。
「やめっ・・・くすぐったいって」
柔らかい声。満足してくれたのかな。
「やっぱり吉沢さんの中、最高ー」
中で繋がったまま、背中から抱きしめる。汗で気持ち悪いのに、それでも抱き合いたいんだ。
「・・・・・・もう一回くらい出来そうだな」
「うわー、吉沢さんエロいー」
「俺じゃない、お前が!」
「いやん、抜かず休まずじゃ、攣っちゃうよ」
「冗談だ」
吉沢さんが笑った。俺も笑った。セックスの後の心地よいけだるさの中で俺は幸せのかけら
を見つけた気がした。
結局その後、そんなこと言ってたのにもう1回。近年まれに見る大量放出に、次の日はまるで
使い物にならなかった俺の身体と俺のイチモツ。
興奮してるからって年には勝てないダメな男でした。
季節は少し過ぎて、暑かった夏が通り越していった。
吉沢さんと俺は、本当に前園さんのところのマンションを購入した。他のマンションも
散々見て回ったんだけど、最後は前園さんのところで、落ち着いた。名義のことや、会社
への報告とか、裏工作しないといけないこととか問題は意外と山積みで、自分達の関係を
分かってくれている前園さんが窓口の方が何かと便利ってわかったから、他のマンション
は諦めたのだ。俺としてはあんまり前園さんと繋がっていたくはなかったけど、仕方ない。
「無事、購入できたのは有能な俺のおかげでしょ?」
ピカピカのラガーマンみたいな笑顔の前園さんの薬指にはプラチナの指輪が光っている。
秋口に、これまたびっくりするほど美人な女性と無事入籍を果たしたのだ。
「ご祝儀は契約でいいですよ」
9割くらい本気でそう言われて、俺も吉沢さんも苦笑いしながら、契約書にサインしたのだ。
引越しの荷物が次々に運び込まれて、あらかた片づけが終わると、新しいリビングに
置いた吉沢さんのソファに2人で座った。
「新品じゃないのに、部屋が変わると家具も違って見えるから不思議ですね」
「欲しいものは、これから欲しくなったらそろえればいい」
「そうですね」
グラスにビールを注いで、吉沢さんに渡す。
「お疲れさま」
「うん、お疲れ」
「・・・・・・これからも、よろしくお願いします」
新しい部屋での新しい暮らしに、とりあえず乾杯。
ちょっと照れくさそうに吉沢さんの頬が赤くなった。
「本当に深海と住むことになるなんて、ちょっと信じられないな」
「後悔しないでくださいよ?」
「しないけど、上手く行き過ぎで怖いよ」
「いいじゃないですか。上手くいって。きっとこれは神様からの指令なんですよ。神様が
一緒になりなさいって言ってるんですよ」
「お前、運命なんて信じてるの」
「信じてますよ。だって、俺と吉沢さんが付き合うなんて、きっと神様くらいしか信じて
なかっただろうし」
「まあ、そうだな」
吉沢さんが苦笑いして頷く。有能で男前の吉沢さんとダメ人間の俺が付き合うなんて、神様
の気まぐれが生んだとしか思えない。でも、こうやって出会って付き合ってるんだから、
気まぐれでもなんでも、大切にしなきゃ。
「神様の気が変わらないうちに一緒に住めてよかったですね」
南無南無と手を合わせたら、それは仏だと突っ込まれた。
「じゃあ、天からの任務は一応完了ってことだな」
カン。グラスを合わせてもう一度乾杯。新しい空気が振動して部屋に響いた。
吉沢さんとともに歩いていく生活に期待を込めて、ぐいっとビールを飲み干す。
この先の事は分からないし、考えると頭の痛いことも多々あるけど、吉沢さんと一緒なら
どんなmissionでも俺は乗り越えられるだろう。
だって、もったいないくらいすごい吉沢さんがいつも隣にいてくれるんだから。
了
2009/06/24
お読みくださりありがとうございました。4部作としては完結しました。機会があれば番外編で。
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