なかったことにしてください  memo  work  clap






「俺、やっぱり、それはここに入らないと思う」
真面目な顔で新井はきっぱりと言った。
新井の目の前には、橘高のペニスが爆発しそうになりながら聳え立っている。パンツの上
からでも分かるその大きさに、新井は怖気づいた。
「大丈夫ですよ。色々そろってますから」
「そろってる?」
「薬も道具も選びたい放題です」
サイドテーブルの引き出しを開けると、新井の見たことも無い道具が次々と出てきた。
「こ、これ・・・?」
「これですか?これはこっちの穴用のスティックです。使ってみます?初心者にはちょうど
いいですよ。あ、ちゃんと洗浄してありますから安心してください」
「ええ?無理!無理だよ〜」
新井が拒否しているが、橘高は新井の腰を掴まえると、ローションを垂らしながら、新井の
秘孔に指を当てた。
「ひゃあ!」
「指で解して、少しずつ柔らかく広げていけば、入りますよ」
言い終わらないうちに、橘高は初めの一本を捻じ込んだ。
「はうっ!何!?何、これぇ〜!?」
「流石・・・開拓してないとキツイですね」
「いや〜、何か・・・・・・何か、変!」
新井がぶんぶんと顔を振る。けれど橘高も引く気にはなれず、入れた指を僅かに動かし
始めた。
「!!」
「動かした方が違和感なくなるかも」
「え?」
「・・・・・・この辺かな。『あっ』てなりますよ」
橘高が言い終わらないうちに、新井は
「あっ!」
と叫んでいた。
「・・・・・・何これ・・・・・・あっ!」
叫ぶ度、ペニスがピクリと反応して、硬度を増してくる。目に見えて元気になるペニスを
新井は恥ずかしそうに手で隠した。
「そういうものだから、気にしなくていいんですよ」
「ええ?」
「ここを刺激すると、そうなるんです。気持ちいいでしょう?」
「ひゃあっ・・・あんっ」
橘高の指が遠慮を忘れ、大胆に動き始めた。
「まだ痛くなさそうですね?」
橘高はローションを垂らし、二本目の指も捻じ込ませていく。再び圧迫感で新井は目を
丸くさせ橘高にしがみついた。
「無理!絶対無理だよ!」
「大丈夫。ゆっくり呼吸して。はい、ふー、ふー、ふー」
根が単純なのか、橘高がそう言うと新井も深呼吸を始めた。呼吸をする度、緊張が解れ
二本の指が次第に動かせるようになる。
新井の中で指を交互に前後させたり、出したりを繰り返すと、新井はふにゃりと身体の
力が抜けていった。
「なあぁん・・・何、これ〜」
瞳の周りが赤い。新井は火照った顔で橘高を見上げた。
「こんな順調に行っていいんでしょうかね?・・・・・・コレ、入れてみます?」
新井は橘高の手にしたスティックと橘高のペニスを見比べる。
「これなら・・・まだ入るかも・・・・・・」
最終的にはこっちを入れるんですけど。その台詞は言わずに橘高は指を引き抜いた。
「あんっ」
それから、今度はスティックをゆっくりと埋めていくと、新井はまた身体を強張らせた。
橘高はペニスに手を伸ばし、ゆったりとした動きでそれを扱き、スティックも奥へと
進める。新井は涙目になりながらも、橘高にしがみついて、橘高のアドバイスを忠実に
行っていた。
「ふー、ふー、ふー」
「・・・・・・やばい、マジで可愛い・・・・・・」
橘高も思わず敬語も忘れ呟いてしまう。スティックの手を止めると、新井は何度も小さな
声を漏らした。



橘高も入れたくてうずうずしていた。パンツの中で何度も暴れているペニスに苦笑いする。
「引っこ抜いていいですか?」
「へ?」
「砕けないでくださいね」
橘高はスティックを一段ずつ引いていく。
「!」
「ふふふ」
「あ!」
「大丈夫ですよ」
「ああっ・・・ああっ!」
引かれる度、新井は気の抜けたような声を上げ、全て抜けてしまうと、くたりと身体を
ベッドに預けたまま動けなくなってしまった。
「何、これぇ〜」
「・・・初めてなのに、すごいですよ新井さん。こっちも出来るかもしれません。入れてみます?」
「へえ?」
橘高の既に絶好調になっている股間を二人で見下ろす。
「う、うん・・・」
あんなに無理だと騒いでいたはずなのに、橘高の提案におとなしく乗ってしまった。
「じゃあ、遠慮なく」
橘高は新井の気が変わらないうちに、素早く準備をすると、新井の身体をひっくり返して
自分のペニスを新井の孔にあてがった。



「ふぅっ!」
カリの部分までゆっくりと捻じ込んで、そこで一旦休憩。キツイながらも、ここまで入れば
後は抵抗無く出来るはずだと、橘高はゴクリと息を呑んだ。
「新井さん、動きますよ」
「あ、あああっ・・・ああ・・・あ!」
新井は音痴が歌うかえるの合唱みたいな声を出した。
「新井さん?」
「や、やっぱり・・・無理、だよ・・・いっぱいになっちゃ・・・あああぁ〜・・・」
ぎりぎりまで引っこ抜かれて、新井の気も抜ける。
それを二三度繰り返すと、橘高は今度は本気で腰を振った。
「え?あっ!あっ!!」
「気持ちい・・・やば、新井さん・・・」
「ちょっと、待って、あっ・・・痛っ、痛いよ・・・ああっ」
後ろから突いて、新井のペニスにも手を伸ばすと、新井のペニスも相変わらずカチカチに
なっていた。
橘高はそのままペニスもこすり続ける。繋がったうれしさと気持ちよさに、橘高は夢中に
なってピストン運動を繰り返した。無言の中に新井の漏れる声と肌の当たる音が木霊する。



「痛っ・・・あっ・・・ああっ」
「いけそう?」
「うん・・・あっ!」
ぷちゅぷちゅとジェルの擦れる卑猥な音に新井は耳を塞ぎたくなった。
「うわ〜ん、もうっ・・・・・・あっ・・・あんっ・・・痛いしっ・・・恥ずかしいしっ・・・気持ちいいしっ」
「ふっ・・・うっ・・・駄目ですかっ?」
「い、痛いのに、いっちゃいそうっなんだもん」
「いいですよ、俺もいつでもいけそうですから」
「あっ・・・ああっ」
橘高が最後にスピードを上げて駆け上っていく。新井も擦られたペニスから相当の刺激を
受けて、やがて頂上を見た。
「い、いく・・・ううっ」
「こっちも・・・出します、よっ」
共に駆けて、熱さを放つと、しばらく二人とも放心した。





ふうっと息を吐いて、新井が生還した。
鼻にかかった声が、いつもより色が付いて橘高フィルター越しに見るとセクシーに映った。
腹回りまで小麦色に焼けた肌も意外にしっとりとして、手触りがいい。橘高は未だに意識が
朦朧としている新井の肌を滑って遊んでいた。
「うぅん・・・」
新井が身体を捻った。
「大丈夫ですか?」
「・・・・・・」
新井はじいっと橘高を見上げた。無言で見詰められて、橘高は焦った。やはり、怒って
いるのだろうか。ただの後輩と思っていた男に、あんな痛い目に合わされて、人生変わって
しまったと後悔でもしてるのだろうか。
「すいませっ・・・・・・」
「あのさー、キッタカッターって・・・・・・」
「はい?」
「キッタカッターってさー」
「・・・・・・浬です」
「あ、そうだった。浬ってさー・・・結構、男の子だったんだね」
「どういう意味ですか」
橘高が問うと、新井は頬をぽりぽりと掻いた。
「・・・・・・俺、逆だと」
「この期に及んでまだ言いますか!」
「だってぇ・・・・・・超痛かったんだもん」
新井は腰をもぞもぞさせて言った。
「大丈夫ですよ。そのうちしっくりいく様になりますから」
「そんなもん?」
「数こなせば」
「そっかぁ」
その返答の意味を橘高は考えあぐねた。新井の本気は果たしてどこにあるのだろう。
吉沢課長に恋されたと騒いでいたのは、吉沢課長に新井自信も恋しているからだと思って
いたが、100%本気だったわけではなさそうだし、自分とこうして繋がったのも、橘高に
好意は持っているのだろうが、本音の部分では何を思っているのかさっぱり分からない。
さっきは恋に落ちたのだと無理やり貫いてみたけれど、勘違いで繋がったままはやっぱり
悔しい気がするのだ。
橘高は新井のおでこに張り付いた髪の毛を手で掬った。
「新井さん、本気になってください」
「うん?」
「俺は本気ですから。本気で新井さんが好きですから」
宣言されて新井は驚いた顔を向けたが、その表情が段々としまりなくふにゃけていった。
「キッタカッターって男前だなあ〜」
「今はまだ吉沢課長のこととか残ってると思いますけど、いつかは俺で一杯にしてみせます
からね。覚悟しておいてください」
「う〜ん?」
新井はぼけた顔を持ち上げた。それから橘高を覗き込んで、橘高の頭をよしよしと撫ぜた。
「新井さん?」
「俺、浬といるの楽しいよ。ドキドキしたし。これって恋なんでしょ?だったらもう、浬
で一杯だよ、俺」
こんな重要なことをさらりと言ってのけた新井に、橘高は固まった。
どこまでも自分の予想の斜め上を行く男だ。けれど、この「裏切り」は悪くない。
橘高は新井を引き寄せると耳元でもう一度囁いた。
「好きですよ、新井さん」
「あはは、くすぐったいよ〜」
新井の無邪気な声がベッドルームに響いた。





次の日、橘高は何食わぬ顔をして新井と共に出勤した。
男同士なら『同伴出勤』なんて目で見られても、いくらでも理由なんて付けられるし、普通
にしていれば、誰も疑うことなどないだろうと高をくくっていた。
けれど、ぴっかぴかの笑顔で席に座る新井を見て、橘高は嬉しい様な恥ずかしいような、
いたたまれないような気分になって席を立ってしまったのだ。
めったに行くことのない喫煙ブースに足を踏み入れると、既に先客がいて、その顔を見た
瞬間、心の中で舌打ちした。
「・・・・・・おはようございます、吉沢課長、深海さん」
「おはよう」
「うっす」
一瞬出来た間の後で、深海がニヤニヤといやらしい笑いを浮かべた。
「で?」
「はい?」
「とぼけんなよ。あの新井の馬鹿みたいな顔見たら、言い逃れなんて出来ないぜ?」
深海に真顔で突っ込まれ、顔を逸らすと隣に並んでいた吉沢課長にも意味ありげな顔で
笑われた。
「上々です」
橘高も吉沢課長に視線で応戦した。
「すげえ!マジかよ!?・・・・・・何かあったとは思ってたけど・・・・・・」
深海はふかしていたタバコを指から落としそうになった。ぽかんと口を開けたままの顔で
固まっている。
「ありえん・・・・・・」
心底驚いている深海に、吉沢課長が突っ込みを入れた。
「橘高はそういう男なんだよ」
「お前、本当にそれでいいのか?新井だぞ?」
「勿論です。何か問題でも?」
橘高に返されると、吉沢課長が失笑した。
「深海もあんまり上から目線で言うなよ?嘗ては同類項で括られてたんだからな」
「吉沢さん!」
吉沢課長が笑う。その瞳には恋人に見せるやさしさが見え隠れしていて、こうしてバレて
しまえば、吉沢課長の視線なんて初めから深海しか見てなかったことがよく分かる。
「なんか、いいですね」
「は?」
「俺も、深海さんと吉沢課長目指します」
橘高が真面目に呟くと、吉沢課長は苦笑した。
「ほどほどに、な」
深海は時計を見ると、少し慌てて灰皿にタバコを押し付けた。
「吉沢さん、そろそろ時間ですよ」
「分かった」
そう言って、二人は禁煙ブースを後にする。その後姿を見送りながら、橘高は数年後の
自分たちを想像してみた。
「出来ない上司を持ち上げまくるっていうのもアリかもしれない」
橘高もニヤっと笑って二人の後を追ったのだった。






2011/01/16

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