天照す、母笑う―晴の会心―
――04年11月1日
そろそろ秋が深まってきた。このところ体調がいい。先生もこのままなら退院も近いって
言ってくれている。今回の入院は長かったから、晴くんにも丘にも随分と苦労と心配をかけて
しまった。陸はよく歩くようになったみたい。丘が「見てないとすぐどっか行っちゃうから大変」
ってお兄ちゃんの顔して言うの。
そういえば、晴くんも丘が生まれた時はおかしいほどオロオロしてたけど、一応パパらしく
なったよね?
新しい家族が1人増えるたび、人は成長するし、幸せは大きくなるのね。
―弥生の日記より―
あまりに目の前の事に囚われすぎていて、俺は重要な日を失念していた。
今日はやっちゃんの月命日だ。来月11月20日にはやっちゃんの三回忌が控えている。仏壇に手を
合わせて、ごめんねと呟くと、写真の笑顔からため息が聞こえてくる気がした。
何時ものあの口癖と共に。
・・・いってくるよ、弥生。
立ち上がって振り返ると、スウェットのままで眠そうにしている天が立っていた。
「なあ、晴さん、やっぱり俺もスーツ着てかなきゃダメ?」
「別にどっちでもいいけど、俺はスーツ着てくつもりだから、お前ジーパンはいてたら浮くと思うよ」
「・・・スーツ着てた方が浮くよ。スーツ着て相手の実家行くなんてさ、まるで、娘さんを下さいって
行くみたいじゃないか」
「じゃあ、息子さんを返してくださいとでも言おうか?」
「晴さん、あのねえ・・・」
天は呆れてるみたいにため息ついて、だけどそれ以上は何もいわずに部屋に戻っていった。きっと
着慣れないスーツとこれから格闘するんだろう。
天、俺は別に息子を返して貰いに行くからスーツきてるわけじゃないんだけどね。俺も天に
似合いそうなネクタイを探しに部屋に戻っていく。
あれがいい、チャコールグレーとブラックのストライプのヤツ。俺は滅多に使わないから、天に
あげよう。やっちゃんがくれたヤツだけど。
土屋家――弥生の実家は車で30分程走った隣の市にある。俺たちは変な高揚感に包まれたまま
殆ど無言だった。だけど、俺は心に決めている。今度こそ自分の気持ちを丘に伝えて、一緒に家に
帰るんだ、と。
土屋家の玄関先で義母さんと顔を合わせた瞬間、義母さんは露骨に嫌な顔をした。
「おはようございます。もう一度、話がしたくて来ました」
俺が頭を下げていると、その声に気づいてか、奥から丘とアツシが出てきた。
「父さん・・・」
「パパーっ」
アツシが俺に突撃してくる。頭にへばりつかれて、動けなくなった。
「こら、アツ危ないぞ」
天が上からアツシを引き剥がして、アツシを抱きかかえた。
「天せんせー」
「おう、アツ。朝ごはんちゃんと食べたかー?」
「プリン食べたよー」
「・・・ご飯食べなさいよ」
アツシの様子を見て一先ずほっとした。それなりに元気にやってるじゃないか。アツシは天の
腕から俺の方に抱っこを求めてきた。その腕を取り抱いてやる。・・・重くなったなあ、アツシも。
この子はいつまで抱っこを求めるんだろうな。甘えさせすぎって丘に怒られそうだ。
「アツシ、元気だなー」
「パパも元気ー」
そうだね。お前達の顔みたら元気が出たよ。俺は義母さんの後ろに遠慮がちに立っている丘にも
声を掛ける。
「丘、元気だったか?」
「・・・普通だよ」
丘の反応も相変わらずだった。けれど丘の顔は疲れて見えた。この子にも散々悩ませてしまったんだ
ろう。ごめんな、丘。
そのうち義父さんがやって来て、部屋用意したからあがりなさいというので、義母さんが止めるのも
無視して俺たちは部屋に上がった。
義父さんはニコニコして俺の背中をぽんぽんと叩いてくれた。それが「もう少しだから、がんばれ」
という意味だってことは俺にもわかって、すごく照れくさかった。
座敷に俺と天、義父さんと義母さん、そして丘をアツシが座った。失敗するわけにはいかない。俺は
今度こそ、自分の気持ちを真っ直ぐに告げようと思った。
不機嫌そうにお茶を飲む義母さんに向かって頭を下げる。その姿を天が隣で後押ししてくれている。
母さんに言われたことや天に言われたで俺は目が覚めた。一番大切なことを忘れているってこと。
「単刀直入にいいます。俺たち別れる気はありませんし、これからもずっと一緒に暮らしていくつもり
です、4人で。丘とアツシを返してください」
顔を上げると、義母さんは俺をじっと睨んでいた。
「駄目です。なんと言おうと、あなた達が別れない限り、この子達は返しません」
負けるもんか。その気持ちが焦らせる。
「俺も、引く訳にはいきません。子ども達を返してもらうまで、今日は帰りません」
「父さん・・・」
丘が困惑した表情で俺を見る。ごめんな、お前達にを不安にさせてばかりで。
「晴さん、この前も言ったとおり、この子達の教育にはあなたの家は劣悪すぎます。あなたのような
いい加減な親にこの子達を任せるわけにはいきません。これじゃあ弥生が可哀相すぎます」
俺は瞬間たじろいだ。弥生を持ち出すのはずるい。死人にくちなしじゃないけど、弥生の気持ちなんて
誰にも分かるわけが無いのに、そんな風に決め付けられたら何も言えないじゃないか。
「弥生はね、弱った身体で一生懸命この子達を産んで、育てて。こんな風になるために死んでいった
わけじゃないのよ。あの子の気持ち考えてみなさい」
「・・・」
確かに、弥生だって死にたくて死んだわけじゃない。そんなの当たり前じゃないか。だけど、やっちゃんは、
俺に言い残したんだ。
「弥生は、分かってくれると思います」
「傲慢すぎるわ」
義母さんが机を叩く。物に当たるのは義母さんの癖みたいなものだ。その姿を見て、アツシが泣き始める。
丘がアツシを抱き寄せて泣くなよ、としきりに言っているが、アツシは泣き止もうとしなかった。
そんな俺たちの姿を見て、天がため息を付いた。
「そんな水掛け論みたいなことやめませんか。死んだ人に対して失礼です」
「・・・天」
「あなたこそ、他人の家の問題に口出さないで下さい。失礼です」
「天は他人じゃありません」
「晴さん・・・」
天が俯く。義母さんはそれを忌々しそうに見ていた。
「とにかくあなたは父親失格です。あなたの元には置いておけません。さっさとお引取りください」
もうこの話は終わりと言わんばかりに義母さんは話を切り上げて立ち上がろうとする。俺は慌てて
それを制するように言った。
「ちょっとまってください。この子達は物じゃないんです。この子達の幸せを奪う権利は義母さん
にもありません」
「権利?この子達はここにいるのが幸せに決まってるじゃないの」
「勝手に決め付けないで下さい。それこそ傲慢じゃないですか!」
丘もアツシも1人の意思を持った人間だ。他人に幸せを奪う権利もなければ、決め付けられる義務もない。
「いいえ、この子たちは、ここで私が教育します。その方がこの子達のためです。この子達はその方が
幸せなんです」
幸せなんて他人に決められるものじゃない。そう、自分の視線で考えてたら駄目だ。母さんに言われた
言葉が胸に満ちてくる。
「この子達に選ばせてやってください。・・・どうしてそんな単純なことが見えてなかったんだろうな。
天に言われてやっと気づいたんだ。この子達には選ぶ権利がある」
「晴さん・・・」
「丘、お前の幸せはどこにある?父さんは天と暮らしてるし、これからもそれは止めるつもりは
ない。おばあちゃんの言う通り、子どもを育てる環境としてはよくないのかもしれない。そんな
ところにいたら丘は不幸になるんじゃないかって、父さん思ってさ。おばあちゃんの家にいた方が
幸せなんじゃないかって、そう思ってお前の事、引き止めなかった。だけど、お前の気持ち、
考えてなかった。お前はどっちがいいんだ?どこに居たらお前は一番幸せでいられる?」
丘に問いかけると、丘はアツシを抱き寄せながら困った顔をした。口にだしていいのか迷っている
ようだったから、俺は言ってみろよとその頭を撫ぜた。
「な、何を勝手なこと言ってるの。この子達はここで住むことがいいに決まってるでしょ!」
この際、目の前で怒りを撒き散らしている義母さんは無視だ。
「父さんは、あの家で丘とアツシと天と4人で住むのが今の一番の幸せだよ」
なんで、もっと早くこの気持ちを言ってやれなかったんだろう。そう言って笑いかけてやったら、
丘の目が潤み出した。顔なんて真っ赤にして、握った拳に力を入れて固まっている。
ああ、よかった。丘の一番欲しかった答えを俺はちゃんと間違えずに言えたみたいだ。照れくさい
のか、大人の注目を浴びて緊張しているのか、唇が震えているのが分かる。
だけど、丘はその緊張を皮肉に込めて、義母さんに言った。
「ばあちゃん、ごめん。オレ、やっぱり父さんと一緒にいるよ。だって、あの家に父さんと天
二人にしといたら心配だもん。父さん、掃除も洗濯も適当だから、オレがいなきゃ、あの家、どんどん
汚れてく一方だもん。・・・父さん洗濯は洗濯機に服放り込んで洗えばいいんじゃないんだよ?皺になる
ものは手洗いコースだって言ってるのに。そのシャツだって適当に洗ったんだろ。シワシワになってる
じゃんか」
「丘・・・」
「ったく、世話がかかる父さんだもん。俺がいなきゃ洗濯だってまともに出来ないんだからさ。
・・・だから、俺、帰る」
世話のかかる父さんでごめんな。その強がり方がやっちゃんにそっくりで俺は笑いを堪えるのに
精一杯だった。
笑いを我慢すれば、心に熱さが溜まって涙が出そうになる。その後で、丘は照れくさそうに付け足した。
「オレ、父さんと一緒に帰るよ。ばあちゃんも心配してくれてありがとう。だけど・・・俺はあの家
でもちゃんと幸せに暮らしてるよ。確かに大変なこと多いけど、父さん馬鹿なことすぐするし。でも
一緒にいると、楽しい。それって駄目なのかな」
丘が義母さんを見つめる。その瞬間、ずっと黙っていた義父さんが口を割った。
「駄目なことあるかい。丘がお父さんと一緒にいたいって思うならそれが一番幸せなことだよ。
和江の負けだ。さあ、お帰り」
義母さんが驚いて振り返る。勝手なことを言わないで、そう言いかけた言葉を義父さんは笑顔で
制した。
おいしいところ持ってくんだから、と天が後で笑って言った。
「ありがとう、じいちゃん」
「ありがとうございます」
俺と天は頭を下げた。丘が立ち上がって俺を引っ張る。
「帰ろう、父さん」
「兄ちゃ、帰るの?」
「うん。アツシもばあちゃんに挨拶しな」
「ばあば、プリン作ってくれてありがとうね」
俺と天はアツシを見てぽかんとしてしまった。丘は、そんな俺達を余所に、弥生の両親に向かって
満面の笑みを浮かべると
「じいちゃん、ばあちゃん。お正月には、遊びに来るよ」
と言ってアツシを連れて先に部屋を出て行った。
義母さんは何も言えなくなっていた。
「そうだな。帰ろう」
部屋を後にすると、義父さんだけが見送ってくれた。
一人娘を亡くして、淋しかったんだよ、和江は。車に乗り込んだときに、窓越しに義父さんがぼそっと
教えてくれた。だから、丘の最後の言葉は何も言えなくなるほど最大の効力を持っていたんだと俺は
思った。お正月には皆で遊びに行こうな、丘。
義父さんの笑顔で手を振る姿が小さくなって見えなくなるまで、丘もアツシも車の窓からはみ出す
くらいに大きく手を振り続けていた。
車を家の方向とは反対方向に走らせていた。丘が後部座席から乗り出して聞いてくる。
「父さん、家に帰るんじゃないの?」
「帰るよ」
「でも、その前に大事な用事」
「何?用事って」
全く、お前はそんな大事なこと忘れちゃってるのか?ちゃんと思い出してごらん。俺は丘の質問には
あえて答えずに、助手席に無言で座っている天に話しかけた。
「なあ、天。井原の姓に、未練ある?」
「な、何、いきなり」
驚いて天が俺の方を振り向く。赤信号で止まって天を見ると、俺は一端呼吸を整えて、天に問いかけた。
「天、うちの苗字にならないか?」
「・・・?!・・・晴さん・・・」
天が遠慮がちに俺の名前を呼ぶ。遠慮するな、家族なんだから。そう決めたんだから。天のツンツン
頭をくしゃくしゃに撫でて俺は再び車を走らせる。横目で天を見ると迷っている顔が見える。
「家族になろう。誰にも文句言われない」
「・・・いいの?」
「いいよ」
はっきりと俺は頷く。天はそれを聞いて、後ろの席にいる2人を振り返った。
「いいの?丘もアツシも」
緊張が車内を包み込む。バックミラー越しに丘を見ると、丘はとっくに覚悟を決めていたようだった。
「いいも何も、父さんと天がそれでいいなら、オレは別に・・・。でも、あんた、うちの苗字になったら
天野天だぜ?上から読んでも、下から読んでも天野天だよ」
あ・・・!俺も天もそれに驚いて、目を合わせた。あはは、そういわれればそうだな。ま、いいじゃないの。
――天上天下
「山本山みたいでいいじゃん」
「うわ、それ、だっさい」
「うはは、ちょーうけるんですけど、それ。天野天」
俺がそう言うと、丘は眉間に皺を寄せて、天は嬉しそうに手を叩いた。そして後部座席に向かって
「井原の、名前に、飽きたところよ!」
と、どこかで聞いたフレーズに合わせて歌いだした。そのリズムに合わせて、後ろの席でアツシが
右手を頭の後ろからにょきっとだして踊りだす。
・・・保育園って何でも教えるところなんだな。
「アツシ、なんだよ、そのへんちくりんな踊り」
「ゆっほ!」
俺と天はそれ見て大笑いして、丘は頭にはてなをいっぱい浮かべている。ああ、幸せってやっぱり
感じるんだな。ちゃんと。
「やっちゃんに報告しないとな」
車を「緑地山墓苑」の看板のある交差点で左折させる。
「あ、今日、母さんの月命日!」
「忘れてただろー」
何のためにスーツ着てきたと思ってるんだ。
「ママー?」
「・・・そんなこと、報告したら、母さん怒るよ」
車を駐車場に止めて、皆で降りながら、丘は呆れて言った。
「やっちゃんはそんなことで怒るような子じゃないよ。こんな風に丘やアツシが育っても、俺が
誰を好きになっても」
だって、やっちゃんの日記の最後の言葉は
『晴くん、子ども達を幸せにしてね。そして、晴くんも幸せになりなさいよ』
だったんだから。
やっちゃんが亡くなった時、もう二度と幸せになんてなれないと諦めていたけれど。人生なんて
何が「幸せ」って感じるかなんてわかんない。
ありがとう、やっちゃん。俺に逃げ口をくれて。俺に幸せを取っておいてくれて。空を見上げれば
澄み渡った秋空のどこかから、やっちゃんの豪快な笑い声が聞こえてくる気がする。
目を閉じると、少しだけ目頭が熱くなった。ごめんとありがとうの入り混じった感傷が君にも
届くだろうか。
歩きながら、天がおどけて言った。
「俺さ、後妻ですって挨拶すればいいのかな?」
「ごさいって何?」
丘が天を見上げて聞く。また、馬鹿なことを。君も大概、俺と変わらず大馬鹿の部類だぞ?
「アツ、こんど、5さいー」
天はアツシを抱っこすると、ぎゅっと抱きしめた。アツシが楽しそうにはしゃいでる。天は
丘に向かって指を差して
「あ・と・づ・ま」
と一語ずつ抑揚をつけて言う。
「あとづまって・・・」
困ったなあ。丘が俺の方を見上げるので、俺はもごもごとしゃべった。
「後から奥さんになった人の事かな・・・」
「・・・!?母さんは母さん1人なんだからね!」
丘は天をみてふんっと鼻を鳴らした。
「天せんせー、おとこなのに、ママなのー?」
アツシが天の腕の中で不思議そうにしている。全く、この子にこそ、ちゃんとした教育をしなければ
ならないんじゃないのか?教えてあげなくちゃならないことが山ほどある。
天は俺たち3人にお構いなく、キツイ冗談を言い続けている。
「あー、でも、晴さん35でしょ?俺まだ28だし、随分と若奥様ねって言われちゃったらどうしよう」
「天、最低!アツシ、馬鹿が移るからこっち来い」
丘に向かってニヤっと笑うと、丘は怒って天の腕からアツシをもぎ取った。丘はアツシの手を引いて
俺たちの前を歩く。
アツシが丘に手を引かれたまま振り返る。転びそうになりなりながら、天を見上げて言った。
「せんせー、わかおくさまってなにー?それってつよい?」
「そりゃもう、強い強い。サイバーマンだってメロメロで負けちゃうかもよ?」
「アツ、サイバーマンよりつよいよ。この前、サイバーレッドたおしたもん。ゆうくん泣かしたよ」
・・・アツシ、正義の味方を倒してどうするんだよ。
天は苦笑いしている俺を見下ろして、また冗談を言っている。
「でも、晴さんの方が奥さんってカンジだよね。ちょっとあわてんぼうの」
俺を見下ろして天が笑うから、俺も自嘲しながら言った。
「洗濯できないけどね」
そう言うと、丘まで振り返って
「掃除だってできないじゃん」
いっちょ前に厭味を言ってくる。全く丘の口の悪さは誰に似たんだろうな。やっちゃん、義母さん
うちの母さん、それから天。
なんだ、どこに居たって同じ様な「教育」しか受けれないじゃん。俺は思わず笑った。
「じゃあ、一番奥さんに向いてるのは丘か」
「ば、馬鹿じゃないの?!もう、アツシ先行くぞ!」
俺ののん気な一言に丘は頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。そして、天にまとわり着くアツシを
無理矢理引っ張ると、さっさと先に行ってしまう。怒ってるんだか、照れてるんだか、感情表現の起伏が
激しい丘の姿を見て、俺も天も思わず苦笑いになった。
義母さんのところで、感情を押し殺していた時より、ずっといい顔をしている。それに安心して、
嬉しくて隣にいる天の手を握り締める。
見上げると天がその手を握り返してくれた。見つめ合って、天が俺の耳元にキスをする。そうして、
また見つめ合うと照れくさくなって、俺は天のスーツのネクタイを引き寄せて、思いっきり唇にキスをした。
天が俺を抱きしめてくる。温かい体温と速い鼓動に希望と幸せな未来を思う。顔をあげると、
極上の笑みをたたえた天と目が合った。
新しい家族が増えるたび、人は成長するし、幸せは増えるんだ。その意味を実感して、俺も会心の
笑顔でそれに応える。
そして、天は俺から一歩離れるとすっと手を伸ばすから、俺はその手を取って歩き出した。新しい
家族の始まりに。
「よろしく、晴さん」
「こちらこそ・・・」
――我家が奥さん!
了
【天野家ことわざ辞典】
天照す、母笑う(あまてらす、ははわらう)
母なる神が治めるこの地において、すべての人間が幸せに暮らすこと。またその様子を見て
天も喜んでおられる様子。万事解決。この世はハッピーエンド♪ありがとう。
天照す、母笑う(あまてらす、ははわらう)
母なる神が治めるこの地において、すべての人間が幸せに暮らすこと。またその様子を見て
天も喜んでおられる様子。万事解決。この世はハッピーエンド♪ありがとう。
よろしければ、ご感想お聞かせ下さいvv
nakattakotonishitekudasai ©2006-2010 kaoruko since2006/09/13