なかったことにしてください  memo  work  clap



「吉沢さん、それ全然説得力無いですよ」
俺は首筋に吸い付きながら、吉沢さんの「病院だ」という言葉を否定した。見れば顔は赤く
蒸気してるし、布団の中に忍ばせた手で股間をまざくれば、堅く反りたったモノにぶち当たる。
 2週間、いやここんとこ忙しかったから3週間近くご無沙汰なわけで、それだけで興奮する
吉沢さんは可愛いけど、やっぱり溜まってたんだろうな。
 パジャマの上から軽く扱くとはあっと悩ましげなため息が聞こえた。
「出してあげましょうか?」
「ば、馬鹿・・・辞めろって」
そんな顔して言われると、もっとやってにしか聞こえないんですけどね、吉沢さん。
「はあっ・・・誰か、来たら・・・どうするんだっ・・・」
吉沢さんは俺の股間を扱く手を押さえながら睨み付ける。まあ睨まれたって全然怖くない
っていうか、襲いたくなっちゃうだけなんだけどね。
「・・・わかりましたよ、こうしとけばいいんでしょう?」
俺は一度吉沢さんから離れると、ベッドの回りのカーテンを閉めて外界からの視線を遮断した。
「声さえ出さなければ大丈夫でしょ?」
「馬鹿、そういう問題じゃないっ」
「じゃあ、どういう問題なんですか?吉沢さんのココ、こんなになっちゃってるっていうのに」
布団をめくり上げ、再び股間に手を伸ばすと、そこはしっとりと湿っていた。俺は吉沢さんの
耳元に口を寄せて
「すっげー、感度いいですね」
と言ってやった。
 その声に反応して僅かに吉沢さんのペニスがびくんと動く。俺はすかさず下着の中に手を
突っ込んだ。
「はうっ・・・」
指先にぬるっとした感触が伝わり、吉沢さんの興奮が分かる。俺はそれだけで嬉しくなって、
パジャマのズボンを無理矢理剥いでしまった。
「辞めろって・・・誰か来たら・・・」
「吉沢さん、全然説得力ないからー、それ」
ぬるぬるになった先っ端を指でこねくり回してその感触を楽しむ。軽く力を入れてこすり上げると
吉沢さんの口から甘い声が漏れ始めた。
「感じてるんだ、吉沢さん。イヤらしいー」
文句を言わないように、口は塞ぐ。舌を絡ませながら、吉沢さんのむき出しになった下半身を
指で虐めると、舌を噛まれた。
「痛い・・・」
「・・・っ。調子に乗るな、馬鹿っ」
「こんな時くらい、調子に乗せて下さいよ」
俺はめげずに吉沢さんの股間に顔を埋めた。
「やめ・・・あっ・・・」
口の中で転がすと、すぐに甘ったるい声が聞こえた。怒ってるのに感じてるのか、感じてる
から怒ってるのか、吉沢さんは甘い声の中に罵声を混ぜ込んで(なんでそんな芸当ができるんだか)
俺の肩を引っつかむ。
「ね、こんなに、吉沢さんの蜜、溢れてるよ」
俺は舌で先端をつついて、ゆっくりと離す。ペニスと俺の舌の間に銀色の橋が出来る。これ
見よがしにそれを吉沢さんに見せ付けて、銀糸は内腿へと垂れていく。
「そんな、こと、するなって・・・」
「気持ちいいでしょ?ちゃんと晴彦さんの味がするよ」
再びそこに口付けをして、今度は裏側から舐めあげる。熱を持ったペニスが一回り大きくなった。
ああ、すっげー卑猥。このままやりてぇ・・・。
 俺はむらむらと自分の股間が膨れ上がっていくのを見ながら、この状況で吉沢さんに手を
出したことを今更ながら少し後悔した。
 さすがにここでのセックスはマズイ。吉沢さんを達かせるだけならまだしも、病院のベッドを
汚すわけにはいかないだろう。
 あー、今夜のオカズに持って帰ろう。現物が目の前にありながら、脳内蓄積とは虚しい限り
だけど、この状況はしかたないだろう。まさか、吉沢さんに処理してもらうわけにもいかないし。
・・・してくれたらそりゃ、最高だけどさ。曲がりなりにも病人にそんなことさせられない。
俺は自分の股間を気にしながらも、吉沢さんのペニスにしゃぶりついて、その感触を味わった。
ゆっくり吸い付いて、舌で弄びながら、吉沢さんの反応を楽しむ。
 俺の舌が動くたびに我慢している声が漏れてくる。吉沢さんの我慢と俺のテクの勝負みたいだ。
・・・まあ、当然俺が勝っちゃったわけだけど。
 指で扱いたら、あっという間に吉沢さんは我慢をやめた。快楽に溺れてる人ってどうして
こんなにいやらしいんだろう。今吉沢さんに俺のを触られたらボクサーパンツの中であっというまに
弾けてしまうんじゃないだろうか。それくらい、興奮するシチュエーションだ。俺、こういう
非日常的なのってそれだけで興奮する性質だったんだなぁ・・・。今更ながら、イメクラって
結構いけるのかもとか俺の腐った脳みそはそんなことまで考えている。
 ・・・吉沢さんは絶対コスプレとかしてくれないだろうけど。
俺の指が動くたびに、吉沢さんの息が上がる。久しぶりに受けた刺激に耐えられないのか、
すでに、吉沢さんの限界は見え始めていた。
「あう・・・しん、いちろう・・・もう・・・ダメだから・・・」
「・・・いいですよ、出して」
「やっ・・・でも・・・」
俺の口に出すのがそんなに躊躇うことか。可愛いなあ、この上司。全てがとろとろに溶けて
しまいそうな表情でぎりぎりを保つ吉沢さんに、俺は優しく声をかけた。
「大丈夫ですから、俺の口に、出してください」
それだけ言うと、もう一度口を落とし、舌と指で刺激を与える。熱く大きく膨れ上がって、
やがてそれは弾けた。
「ああ・・・もう、出る・・・」

3週間ぶりの解放に吉沢さんは脱力して、俺の肩を力強く握り締めていた拳もダルそうにベッドに
落ちた。肩で息をしながら、とろんとした瞳で俺を見る。
 舌の上で吉沢さんの放った精子を受け止めていたら、吉沢さんがはじけた様にティッシュを
差し出してきた。
「バカ、そんなもん、早く吐き出せ」
まあ、別に飲めって言われたら飲めなくもないんですけどね。無理して飲むものじゃないし
俺はティッシュの上に吐き出した。途端、青臭いにおいが俺の鼻腔を刺激する。
 人間体臭とか千差万別なのに、精液の匂いってどうしてみんな同じなんだろうな。俺が
そんな馬鹿なこと考えていると、ペットボトルのお茶まで差し出された。
「早く、お茶飲め」
ホント潔癖症なんだから。俺吉沢さんのだったら別に平気なんだけどな。そんなこと言ったら
どうせまた変態扱いされるだけなので、俺は何も言わずにペットボトルを受け取って、口の中を
「洗浄」した。
「ごちそうさまでした」
「お前、何言ってんの?!」
「吉沢課長をおいしくいただきました」
そう言って、力のぬけた吉沢さんの手を取って甲に軽くキスを落とす。
「変人」
ぼそぼそと小さな声で吉沢さんが呟く。
「何です?」
「・・・お前は・・・いいのか?」
あはは、やっぱりちょっとは気にしてくれてたんだ。
「俺だって、わきまえてますよ!ここで吉沢さんとしたら、どんな惨事になるかくらい。楽しみは
全快まで取っておきますから」
「でも、お前・・・」
吉沢さんは明らかに膨らんでる俺の股間を申し訳なさそうに見ている。そうまじまじと見つめ
られると、恥ずかしいんですけど。
「ふん、いいんです。家帰って、吉沢さんオカズにマスかきまくってやるんだから」
そういうと、吉沢さんは信じられないという顔をして俺を見つめた。
「深海?!」
「俺の頭の中で、あんなことや、こんなことや、そんなことまでさせて、弄んでやるんだ」
「お前の頭は腐ってるのか!!」
あっと赤くなる顔を両手で隠して、吉沢さんが叫んだ。
 うわおっ。何て刺激。何て興奮。面と向かってオナペットだなんていわれて赤くなる課長って
ねえ、どうなの。何プレイなんだ、こりゃ。こんなことにすら興奮してしまう俺ってやっぱり
脳みそ腐ってるんだろうな。
「やだなぁ、そんなの、前からわかってたでしょう」
俺はにやっと笑って、吉沢さんのおでこにちゅっと吸い付いた。病院の匂いと吉沢さんの匂いと
汗の匂いを吸い込んで、俺は夢の世界の土産にしようなんてまた馬鹿なことを考えていた。


 次の日、仕事帰りにいつものように病院に向かうと、吉沢さんがにっこり笑って、「明日
退院なんだ」と言った。退院が嬉しいのか、仕事復帰が嬉しいのか俺には判断着かないけれど、
とにかく退院というのは喜ばしいことだ。
 吉沢さんは既に荷物の殆どを片づけていて、ベッドの隅に紙袋が置いてあった。
「じゃあ、荷物だけでも先に持って行きますよ。マンションに置いておきますね」
「悪いな、頼めるか?」
「それくらい構いませんよ」
袋いっぱいの着替えや雑誌を尻目に俺は頷いた。

 暫くは会社の連絡事項や立川さんの心配ぶりや雑談をして時間が過ぎていった。こうやって
病院で吉沢さんと話すのも最後か。まあ、明日になればこれが吉沢さんのマンションに変わる
だけの話なんだが。会社と病院の往復も、桃ゼリーの買い込みも、もうしないで済む。そう思うと
ほっとした。正直ハードワークなのは吉沢さんだけじゃないのだ。俺はあくびを噛みしめて
立ち上がった。
「いよいよ、明日退院できますね」
「やっとだ。本当に大変な目にあった。・・・深海にもいろいろと迷惑掛けてすまなかったな。
ありがとな」
「え、あ、そんな・・・俺は、別に」
急に吉沢さんがお礼を言うもんだから、俺はどう対処していいか分からずしどろもどろになった。
吉沢さんから優しい言葉を掛けられると素直に頷けない俺って一体。身体中に染みこんだ
「吉沢さんには怒られるのが普通」体質が優しい言葉を受け付けないらしい。どうなのこれ。
俺ってば「どM」だったりして。
 呆れ顔で吉沢さんはため息をついた。
「お前は人の感謝が受け取れないのか?」
「そんなことないです!受け取ります。ほら、ちゃんと、こーやって」
俺は吉沢さんに近づいて唇をそっと重ねる。ちゅっと音を立てて吸い付くと、吉沢さんの
拳が俺の腹を直撃した。
「いってー」
衝撃で思わず後ろによろける。腹を抱えてうずくまっていると、上から吉沢さんの小言が
降ってくる。やっぱり、俺にはこっちの方が似合ってるんだよな。
「馬鹿、人に見られたらどうするんだって前から言ってるだろう」
「そんときは、責任取ります」
「何の責任だっ」
俺は腹をさすりながら、立ち上がると、ばれたら一緒に南の楽園に逃亡しましょうと、真顔で
言った。冗談だけど、嘘じゃない。ホントにばれて、大変なことになるなら、いっそ逃亡して
二人で暮らしたい。
「お前と二人っきりで南の島になんて行ったら、俺の人生ダメになる」
「なんてひどい事言うんですか」
「ダメ人間がうつるじゃないか」
人をばい菌扱いして・・・ったく、どこまで本気なんだか。吉沢さんはベッドから降りると、
「下まで送る」と言って荷物を持ち始めた。
「あ、いいっすよ、これくらい。持てますから」
「俺の荷物だ、病院の中くらい自分で運ぶさ」
「じゃあ、下までデートってことで」
「阿呆」
そう言って、俺がさりげなく吉沢さんの腰に回した手を、吉沢さんはおもむろにひっぱたいて
病室を出て行ってしまった。
「吉沢かちょ〜、待ってくださいよ〜」

 下のロビーまで降りると、吉沢さんから荷物を受け取った。雑誌が数冊あるらしく、受け取った
荷物はずしりと腕に響いた。
まあ、歩いて数分だし、何とかなるだろう。そう思ってじゃあと言って手を上げた、そのときだった。
 ロビーの奥から知った声が聞こえたのだ。黒い人影から発せられる声。
「見ーちゃった、見ちゃったー」
「なっ?」
俺たちは同時に振り返り、そこでにやけてる斉藤さんを目にした。
「斉藤さん・・・?」
「せっかくお見舞いに来たんですけどね、もう退院なんですか。予定より2日も早いじゃないですか」
「なんでそれを・・・」
知ってるんですか、という言葉を飲み込んで俺は硬直した。まさか・・・。
「別に、見たくて見た訳じゃないですからね、課長」
斉藤さんは吉沢さんの肩に手置いて眉を動かした。吉沢さんの表情が曇る。
「たまたまですよ。本当に偶然。見舞いに行こうと思って病室訪ねたら、中から声がして、ね。
深海の声だったので、ドアの隙間からちょっと中の様子を窺ったんですよ。そしたら、あれまあ・・・」
 もういいですって!!続きは言わなくても分かってますから!!
 俺は一人赤くなったり青くなったりしながら、吉沢さんと斉藤さんの成り行きを一歩後ろで
見守っている。
「俺こう見えて口堅いですから、安心して下さいよ、課長。誰にも言いませんって。その代わり
そうだな、松阪牛のしゃぶしゃぶにでも連れて行ってもらおうかな」
斉藤さんはおどけた表情で吉沢さんをのぞき込むと、吉沢さんは無言のまま俺を指さした。
「あ、そっか。悪いのはこっちか。じゃ、深海、今度の金曜はしゃぶしゃぶな。松阪牛だからな!」
吉沢さんから離れると、斉藤さんは俺に近づいて、にやっと人の悪い顔で笑った。
「あのう・・・」
「大丈夫だって、俺お前や課長さんの気持ちはよーわからんけど、干渉もしないから。好きに
すればいいし、人の恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られてなんとやらだよ」
「はあ」
「でも、しゃぶしゃぶはおごれよ!」
斉藤さんはそれだけ言うと上機嫌で病院を後にした。残された俺たちは沈黙の中で動けずにいる。
 ばれた。斉藤さんにばれた。
・・・いや、斉藤さんには前からばれてる気がしてたけど。もう決定的だ。どうしよう。
俺は斉藤さんの後輩だし、ばれても平気とまではいかなくても、なんとかやれると思う。
でも、吉沢さんは違う。部下に自分の恥部を知られてしまったのだ。取り返しが着かないだろう。
 この事態はどうしようもなく、まずい。明日斉藤さんに謝って、謝り倒して、口封じして、
あー、ホントに口封じしてしまいたい。あの人消せばこの事実を知る人間はいない。そうだ、
一思いに、こう、ざくっと・・・
 ・・・馬鹿なこと考えてる時じゃなかった。どうしよう、どうする俺!
 後ろを振り返るのが怖い。振り返らなくても明らかな殺気を感じている。
 絶対怒ってるに決まってる。しかも、見られたらどうするんだって散々怒られた現場を見られてる
のだから、言い訳も聞いてくれないだろう。
 生唾を飲み込み恐る恐る振り返ってみれば、頭から角が生えてきそうな勢いで吉沢さんが仁王立ち
していた。
「ふーかーみーっ」
吉沢さんのオーラが真っ赤になってごうごう燃えているように見えた。俺は瞬間、「殺気って見えるんだ」
と妙なところで感心してしまう。
「お前はっ」
ドスのきいた低い声で怒鳴られて、俺は肩がびくんと跳ね上がる。
「うへえ、ごめんなさい、ごめんなさい。もう公共の場所では二度としませんからっ」
「当たり前だ!!」
炎の勢いは留まることなく燃えさかり、吉沢さんの回りは火の海になった。やばい、今近づいたら
焼き殺されるっ。
 今は触らぬ神に祟りなしだ。阿修羅神のごとく怒る吉沢さんをその場に、俺はダッシュ体勢で
「あ、明日、マンションに伺いますから!」
とだけ言い残して、脱兎よろしく病院から立ち去った。
 吉沢さんの退院は新たな悩みの種を運んで、芽吹いて、花まで咲かせてくれたのだった。


<<6へ続く>>








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