「みんな、お疲れ。内容に関しては個々に反省する部分もあるだろうが、とにかく勝った。
まずはおめでとう。よくがんばったな。でも、まだ次があるから気を抜くなよ」
部室に戻ったメンバーに監督の藤木が労いの言葉をかけた。
藤木はベンチの中でぐっと堪えていた気持ちは敢て語るのをやめた。一番ベンチの中にいて
一番冷静になってみていたのは監督自信なのだから、当然ベンチの雰囲気が回を追うごと
に悪くなっていたのは分っている。
監督としてはそのモチベーションについて喝を入れるべきなのだろうが、藤木は部室の
隅で燻ってる湧井を見てその役目を湧井に託した。
このチームは彼が作り上げて、彼が引っ張ってきたチームだ。自分がこの子ども達に出来る
事は見守る事くらいしかないだろう、と藤木は思っている。
監督と呼ばれるほど監督らしい事は出来てない。こういう時に厳しい言葉をかけないのは
監督失格なのかもしれない。けれど藤木はそのスタンスを崩すつもりはなかった。
湧井が言い出したことだ。絶対勝つから全て自分達でやらせてくれと。そのときに藤木は
決めたのだ。チームが割れたときも自分は口を出さないと。
冷たいと思われても、それが湧井の本当の責任だと藤木は思う。これを乗り切ってこそ
チームも湧井も成長する。そう信じて藤木は何も語らなかった。
湧井が間違った方向に突っ走らない限り、自分はこの子ども達を見守ろう。自分が出て
行くときは、湧井が壊れたときだ。
湧井はまだ冷静でいられる。その怒りすらコントロールできているはず、藤木は湧井を
信じた。
「今日は軽いランニングとストレッチで体を休めて、明日からまたがんばれよ。・・・・・・俺の
言いたい事はそれだけだ。じゃあ、湧井。あとはお前から」
湧井に話を振ると、藤木は部室の隅にパイプ椅子を持って行きそこにひっそりと座った。
その様子を見て湧井はゆっくりと立ち上がる。体中から湧き上る不機嫌さを全開にして
湧井はメンバーの前に立った。
「お疲れ。がんばったヤツがいるからだと思うけど、よくK高に勝ったな。・・・・・・正直言って
今日の試合は負けてもおかしくなかった」
声が震えているのが周りのメンバーにも伝わる。
「多くは語らない。でもその責任が誰にあるのか、お前らは分ってると思う」
湧井はベンチで敗色ムードを出していた後輩を一瞥した。
「よく反省しろ。勝つってことは簡単じゃない。苦しいところを乗り越えなきゃ手に入らない
んだ。こんな事で折れるな」
それから、湧井はバッテリー達の方を向いて声色を更に厳しくした。
「タカラ、山下、それから三須。お前達も十分反省しろ。バッテリーが喧嘩してたら試合
にならん。マウンド上で言い合いなんてするな。仲良しでいろなんて言わないから意思の
疎通くらいできるようになれ。バッテリーの空気が周りの空気を動かすんだからな」
「・・・・・・すみませんでした」
湧井に睨まれた陽斗は素直に頭を下げた。
確かに颯太とは合わない。特に今この状態で仲良くバッテリーを組むなんて至難の業に
しか思えないが、私情を持ち込むのはもう二度としないと陽斗は決めたのだ。歩への感情
のもつれから、むき出しにされた敵意に一々反応していてはいけないのだろう。自分がピッチャー
としてやらなくてはならないことは、勝つことであって、颯太と争うのはマウンドを降りた
後の話だ。
「以後気をつけます」
颯太も不機嫌な顔のまま軽く頭を下げた。颯太の方は陽斗ほど納得していないのかもしれない。
「それから・・・・・・」
湧井はギロっと歩を振り返る。歩は部室の隅で小さくなって座っていた。こうしてみると
本当に存在感がない。同じメンバーでさえ、ここにいる事を忘れてしまいそうになる。
けれど、この男がまぎれもなく豊山南高のエースなのだ。
「タカラ!」
湧井は語気を強めて歩を呼ぶ。
「・・・・・・はい」
歩は虚ろな瞳のまま顔を上げた。オーラが無いどころか生気もないような顔だ。
「もし今日負けていたら、お前は確実に『戦犯』扱いだぞ?」
「・・・・・・はい」
「それくらいお前の責任は重い。反省してるのかまだわからんけど、よく考えろ。お前は
この試合をぶち壊したんだ」
「・・・・・・はい」
歩は壊れた人形のように返事だけを繰り返す。その手ごたえの無さに湧井は更にいらだった。
「K高の試合がどれだけ重要なのか、俺は散々言ってきたつもりだったけど、お前には届いて
いなかったのか?!」
「・・・・・・」
「絶対勝たなきゃならない試合だって、試合前からあれだけ煽って、モチベーションあげて
来たつもりだったのに、俺のやってた事、お前には何にも伝わらなかったのか?」
「・・・・・・」
「どんなつもりであそこにいたんだ?!」
「・・・・・・」
「お前、エースなんだぞ?!」
「・・・・・・」
「おい、なんとか言ったらどうなんだ!」
いらだった湧井が近くのパイプ椅子を蹴飛ばす。椅子はその場に倒れてガツンと耳を塞ぎ
たくなるような音が部室に響く。部屋の空気が一気に緊迫した。
鬼のような形相で睨まれて、歩は動けなくなった。湧井がここまで怒るのは初めてだ。
普段ならば温厚な先輩を怒らせたことへの戸惑いで歩はどうしていいかわからなくなる。
今更謝罪の言葉を出したところで収まる気もしなかった。
「俺達は、先輩の為に戦ってるわけじゃないっす!」
「何?!」
緊迫を破ったのは颯太だった。
歩の前に出ると、歩の壁になるように湧井を睨みつける。突然の行動に湧井も驚いて
一瞬怯んだ。
「先輩がK高にどれだけかけてきたのか、俺達だってちゃんと分ってます。・・・・・・もういいじゃ
ないですか、勝ったんだから。歩だって一生懸命投げた結果なんです!」
「勝ったからいいなんて、そんな気持ちでいたら、次は無い」
「・・・・・・先輩は何をそんなに怒ってるんですか?K高戦で自分の描いた試合が出来なかった
からですか?ライバルを完膚なきまでに倒して見下してやるつもりだったんですか?湧井
先輩が坂井に個人的に何を思っても関係ないですが、大切な試合を勝手に2人の勝負にしない
でください!」
「?!」
颯太が叫んだ。試合中、いや試合前からずっと感じてきた違和感。K高にかける湧井の思い
は颯太には理解できなかった。
「止めろ颯太。言いすぎだよ」
食い下がろうとする颯太に彰吾が止めに入る。颯太は分っていない。湧井が何故歩に声を
荒げているのか。
彰吾は湧井の怒りの意味を正しく理解している人間の1人だと自分では思っている。けれど
颯太は見えてないのだ。
「・・・・・・歩を責めるのなら俺だって黙ってられない。なんで1人を責めるんだ?」
「でも、歩が崩れたのは本当のことだろ」
「どんなピッチャーだって崩れる事はある。そう言うのを責めるんですか?だったら、試合
に私情を持ち込んだ湧井先輩も責められてもいいと思いますが!」
颯太が湧井を睨みつける。敵意むき出しの態度に湧井は首を振った。
「三須の言ってる意味が分らない」
「じゃあ言わせて貰いますけど。3回の表の攻撃、覚えてますか?ツーアウトで坂井が2塁に
なったとき、次の打者がショートゴロ打ちましたよね」
「ああ」
「あの時先輩は、ファーストに送らずに坂井が突っ込んでいったサードに送った。ファースト
に投げれば確実にアウト取れたはずなのに、先輩は坂井をアウトに取りたくて3塁にボール
を投げた。違いますか?」
「3塁でも刺せると思ったからだ!」
「先輩がそんな初歩的なミスをするとは思いません!先輩はただ、坂井と勝負したかった
だけです!あれで点数はいらなかっただけマシですけど、どう考えても先輩はK高との試合
に私怨を持ち込みすぎだった!」
心外の言葉が返ってきて湧井が目を見開く。後輩に自分の姿はそんな風に映っていたのか。
自分のやってきたことが何も伝わってない。
「それを棚に上げて、試合をぶち壊したなんてよく言えますね」
「・・・・・・」
「結局、湧井先輩は坂井との勝負に勝ちたかっただけなんじゃないんですか」
颯太に言い切られて、湧井は我慢が出来なくなる。近くの机を蹴り上げて怒鳴った。
「そう思うなら、お前らもう勝手にしろ!」
湧井は怒りに震えながら、そのまま部室を出て行ってしまった。激しくドアを閉める音が
緊迫した部室に響く。
一瞬できた静寂に誰もが固まっていた。瞬き一つも出来ないほど陽斗は硬直している。
歩は何が起きたのか分らないのか、うつろな目のまま、湧井の出て行った扉を見つめた。
しんとした空間の中で、一番初めに動いたのは黒田だった。
「湧井のことは、気にするな。直ぐに戻る。・・・・・・でも、お前達はもう少し頭冷やせ。湧井
は自分の思惑だけで動くような人間じゃない。そのことはお前達自身が一番わかってるはずだ」
黒田は座っていたパイプ椅子からのそりと立ち上がると、静かに部室を出て行った。
湧井を追いかけるつもりなのだろう。
藤木は心の中で溜息を吐いた。いよいよ自分が出て行く出番かもしれない。湧井の逆鱗
に触れてしまった颯太に、湧井の怒りの意味を正しく理解させるのは自分の役目だ。
周りを見渡して立ち上がろうとした瞬間、藤木は行動を止めた。
重苦しい空気の中をもがく様に這い上がったのは海野瑞樹だった。
海野は一呼吸置いて、バッテリーを振り返る。
「宝田はいいな、そうやって本気でかばってもらえる友人がいて。大切にしろよ」
「・・・・・・先輩?」
「湧井が切れるのは、まあ気にするな。それだけK高戦にかけていたのは確かなんだから。
でもな、湧井が本気で怒ってたのは、お前達の気持ちのあり方だと思うよ」
「気持ちのあり方・・・・・・?」
颯太も歩も、そして陽斗も海野の言葉に我に返る。
「お前達の試合の技術に湧井が本気で怒ると思ってたか?湧井は真剣にやって失敗した
プレーに文句つけるほど小さな人間じゃないよ」
確かにそうだと、陽斗も歩も思う。湧井は自分達を正当に評価してくれる人だ。
「宝田のピッチングが絶不調だったのは仕方ない。マウンド引き摺り下ろされたのは悔し
かっただろ?だけど、その気持ちをベンチの中で膨らませるな。エースがそんな気持ちで
いると、回りに感染するんだよ。負の連鎖は早い。山下も三須も。わざわざ試合を壊すよ
うな雰囲気を出して。・・・・・・そしてベンチの中は『負けるかも』っていう気持ちで一杯に
なってた」
海野は周りの後輩を見渡す。誰もが思い当たる節があるのか苦い顔をしていた。
「試合中に一番やってはいけないことは、自分のチームが負けるって想像する事だ」
颯太が息を呑む。陽斗は自分の中に芽生えていたあの時の感情を指摘されて惨めになった。
「俺ですらプレーしながら、お前達のその空気を感じてた。湧井がその空気を読めないわけ
ないだろう。山下も三須も負けるかもって思いながら投げてただろ。そういう気持ち
が湧井は許せなかったんだよ。湧井が怒ってた理由、ちゃんと理解しろよな?」
藤木は海野の背中を見て小さく微笑んだ。
なんだ、湧井だって良い友達がいるじゃないか。自分が出て行かなくても、まだこのチーム
は崩れる事は無い。大丈夫。立ち直れるはずだ。
藤木は立ち上がると軽く手を打った。
「よし、お前ら。今日の反省点は個々に持ち帰ってよく考えるようにな。とりあえず今日は
これで解散!」
怒りに任せて飛び出してきた湧井は学校を囲むフェンスをぼんやり見つめながら、自分の
行動を振り返っていた。
私怨だと言った颯太の言葉が頭を巡る。そんなつもりはなかった。特別な勝負だとは
思っていたけれど、それをプレーに出すようなことだけはしていないつもりだった。
心外だったが、心のどこかに引っかかっていた事がプレーに出ていたのかもしれない。
現に指摘されたあのプレーはいい訳にはならないような気がしたのだ。
「くそっ」
湧井は悔し紛れにフェンスに向かって拳を振り上げた。
「素手でそんな硬いもの殴るな」
後ろから腕を掴まれて殴りかかった腕が止まった。
「黒田?!」
「怪我したらもっと言い訳通じなくなる」
「・・・・・・すまん」
湧井は握り締めた拳の力を抜いた。黒田は湧井の腕の力が抜けるのを確認してそっと手を
離す。湧井の手はふにゃりと下に落ちてそのまま湧井自身も崩れ落ちそうになった。
「湧井」
黒田が湧井の肩を抱きとめようと手を差し出すが、湧井はその前にフェンスに体を預けた。
「俺って自分勝手なのかな」
黒田は湧井の為に差し出した手を決まり悪そうに引っ込める。
「あいつらに、あんな文句言ったけど、俺も同じなのかな・・・・・・」
そう言った湧井の目からはいつもの強さが感じられなかった。強気で大口ばかり叩く湧井
がここまで落ち込んでいる姿を見るのは黒田は初めてかもしれないと思う。
「お前の所為じゃないだろ。最後まで諦めなかったのはお前だし、負けると思ってたのは
あいつ等だし」
「それはそうだけど・・・・・・」
「大体、問題なのは山下と宝田と三須の3人だ。試合前に何があったのか知らないけど、あいつ
等が絡まなければ、こんな事にはなってなかったはずだ。湧井が落ち込む必要なんてない。
お前はあいつ等に怒って当然だ」
黒田の言葉は本当だろう。歩の不調、三須の態度、陽斗の表情、どれをとってもあの3人の
中で何かあったとしか思えない。試合中から湧井にも伝わってきた事だけど、さっきから
颯太の言葉が頭から離れないで、湧井を苦しめている。
「俺、なんか間違ってたのかな・・・・・・」
「何が?」
「K高に勝ちたかったのは、坂井に勝ちたかったから。でも、坂井に勝たなきゃ甲子園は
ない。・・・・・・俺、本気で今年は甲子園狙ってるんだけどさ。その本気が空回りして、俺
1人で躍起になってただけなのかも」
坂井に私怨を持ってるのもまた真実だ。それを簡単に見破られるつもりはないが、坂井が
黒田を貶すたび、湧井は悔しくて堪らなかった。なんとか見返してやりたい。最強の二遊間
は自分と黒田だと、見せ付けてやりたいその思いは絶対にあったから。
フェンスに寄りかかって黙って俯く湧井に、黒田は声のトーンを少しだけ明るくする。
「湧井、落ち込みすぎ」
見上げる黒田は優しい顔で笑っていた。湧井は急に恥ずかしくなって早口になる。
「そりゃ、落ち込むさ!いいチームに育ったって自分でも思ってたのに、振り返ってみれば
幻影みてただけだったなんてさ」
「幻なんかじゃない。うちのチームはいいチームだ。おまえが信じなくてどうする」
黒田の言葉が胸に染みる。自分からチームを見捨てるようなことをしている場合じゃないと
黒田の瞳が語った。
「お前は今のままでいい。みんな分ってるはずだから」
「そんなんじゃ誰もついてこない。豊山南は俺のチームなわけじゃない、みんなのチーム
なんだから」
「湧井のチームだ。湧井が大切に作り上げたチームだろう」
「確かに俺が引っ張ってきたところはあるよ。だけど俺のモノじゃない・・・・・・」
「お前のチームだ。みんなお前に憧れてここに来た。湧井が迷走してたら、チームはどこに
向かえばいいのか分らなくなる」
黒田の真剣な眼差しが、しっかりしろと湧井の心の底に呼びかける。湧井は心の中にあった
もやもやしたものを一掃した。
「・・・・・・そうだな」
漸く、湧井の中でも前に進む踏ん切りがついた。燻ってる場合じゃないのだ。試合はまだ
続いているのだし、これからも勝って行かなければ甲子園はない。
「お前はお前のまま、信じたものを貫けばいい」
黒田の顔は何時に無く真剣で、ひどく照れくさくなる。そんな言葉を自分に惜しげもなく
かけてくれるのは、多分黒田しかいない。
「黒田は俺に甘いんだよ」
湧井は自嘲気味に笑ってみせると、黒田は首を振った。
「俺はずっと湧井と一緒にいて、湧井の事見てきたつもりだから」
黒田の言葉に湧井が揺れた。黒田の言葉の意味に他意はないのだろうが、何故だか湧井は
嬉しくて動揺してしまう。
自分と黒田だけに分る空気。黒田が隣にいてくれてよかった。この男がセカンドで、
一緒に野球ができて、そして自分を理解してくれる友人でよかった。
「おまっ・・・・・・俺の事おだてても、ろくな事にならないぜ?」
「ビックマウスが復活するならそれでいい」
「黒田ぁ?!」
「湧井は大口叩いて、偉そうにしてる方が似合ってるし、多分みんなも弱いお前になんて
付いて行かない」
「俺はどこのお山の大将だよ」
照れ隠しの変わりに湧井は黒田の肩に軽く拳を突いた。その手を黒田が慰めるように掴む。
黒田の手はしっとりと汗ばんでいたけれど、不思議と不快な気分にはならなかった。
「・・・・・・帰るか?」
「ああ」
湧井は漸く強張った顔の緊張が緩んでいくのを感じた。
自分はこのチームの中で絶対に折れるわけにはいかない。でも、折れそうになったときは
黒田がいる、そう思うと湧井の体の強張りはすっと軽くなる。
黒田以上の男なんていないんだよ、坂井。
湧井はもう一度、あの小憎たらしい顔を思い浮かべて1人で笑った。
真っ暗になった道を2人で歩きながら、湧井は黒田を見上げることなく言った。
「それにしても、タカラと山下、あいつら絶対なんかあったよな?」
「多分」
即答に湧井の溜息。
「何かってなんだよ。勢い余って告白したとか?」
「さあ」
「で、鈍感なタカラが暴走して三須を巻き込んで泥沼三角関係とか止めてくれよ」
「山下は大丈夫。あいつは意外と強い」
「じゃあ、意外と弱いのはタカラの方か」
「今まで挫折らしい挫折を味わってこなかったんだと思う。いい機会だ」
「もし、本当に山下がタカラに告白してて、それでタカラの調子が狂い始めてるとしたら・・・」
「?」
「いや、タカラにしたら大迷惑な話だよな」
「精神を鍛えるのに丁度いい」
またもや黒田の即答に湧井は苦笑いを隠せない。
「みんなお前みたいな鋼の心臓持てるわけじゃないんだぞ!」
黒田は頭半分程度低い湧井を見下ろして笑った。
「俺だって、湧井が思ってるほど強くない」
「そうか?」
「多分」
黒田は頭上を見上げる。
既に一番星は輝き始めていて、昼間よりも少しだけ涼しい風が吹いている。
次の戦い――4回戦は3日後だ。それまでにこのチームがどう転ぶのか黒田は想像して
首を振った。
きっと上手くいく、そう願うしかない。
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