「・・・っ」
薄く開いた口から小さな息が漏れる。新井の手が橘高のシャツを握った。隙間に捻り込む
ように舌を這い入れ、新井の舌を掻き出すと、新井は益々身体を強張らせた。
「ふっ、ふくぅ」
橘高はお構いなしに新井の上に覆いかぶさり、身体を密着させていく。身体のところどころ
から発熱し始めて、強くくっつき合った部分はどちらとも無く熱かった。
「キッタカッター・・・俺・・・!」
「何でしょう」
「やばいよ、やばいよ〜」
「いいですよ、俺もその気ですから」
橘高は自分の腰を新井に押し当てた。既に熱を持ち始めているソコは新井からも確認できる
ほどの硬度があり、新井はそれに驚いて橘高の顔と下半身を見比べた。
「いいの?」
「勿論です」
橘高は耳に唇を寄せる。形のいい耳たぶを軽く噛むと、ぴくんと新井が反応した。
「ん!」
それから、首筋をたどって鎖骨まで降りると、シャツのボタンを外した。
シャツの中から見えるのは、眩しい程、白色のタンクトップ。いかにも新井らしくて、
橘高は顔が緩んだ。
「くっ・・・新井さん」
「へぇ?」
「・・・そういう期待を裏切らないところも大好きですよ」
タンクトップの肩をずらせば、くっきりと日焼けの後が残っている。休みの日には本気で
この格好でランニングでもしてそうな勢いだ。
「下着は白のブリーフだったりしませんよね?」
「今日は犬の模様のトランクスだよ」
「・・・・・・いちいち、可愛すぎますよ、新井さんは」
橘高は言いながら、新井のYシャツを脱がせ、タンクトップを剥いだ。
小麦色の肌にぷくりと浮かぶピンクの突起物。それを指で弾くと、新井はまた身体を震わせた。
「ひゃあ」
「立ってる」
「え?ホント?」
「ええ」
橘高は今度は唇を近づけて、舌でぺろりと撫でた。
「ひゃああ」
新井は身体を捻って、橘高の舌から逃れようとする。橘高は新井の身体を押さえ込むと、
今度は口を当てて吸い上げた。
「ふぅん!」
新井は足をばたつかせて、首を振った。
「キッタカッター、ダメだ〜〜」
「駄目ですか?」
「だって、こんなにサブイボが!」
体中に出た鳥肌を見せながら、新井は抵抗した。
「大丈夫ですって。ほら、こっちは結構反応してますよ」
橘高は腿で新井の股間を押すとにっこり笑って見せた。
くすぐったいのか感じているのか新井自身、分からないのだろうか。一瞬驚いて、橘高の
顔を見上げると、途端に恥ずかしそうに腰を動かした。
「いいんですよ。感じてもらうためにやってるんですから」
「で、でも・・・・・・!」
何か言いたそうな新井の表情を飲み込んで、橘高は再びキスをした。
上唇を何回か啄ばみ、新井の緊張を解すと、もう一度フレンチなキス。ぺたんとした新井
の舌を絡ませて吸い上げる。そうしている間に、橘高は新井の股間に手を伸ばした。
「ふうん!」
橘高の手に張り付いてきたのは、しっかりとした硬さを持った新井のペニスだった。
ズボン越しに握ると新井が逃げようと腰を引くが、橘高は掴んだペニスを離すことなく
軽く扱いた。
「ううっ」
「こんなに反応してるなら、出来そうですね」
掴んだペニスを離し、指で押すと、ズボンの上からでも小さく揺れるのが分かった。
「あっ・・・うん・・・うん?!」
戸惑い気味の新井の反応は無視しして、橘高は自分のペースで進めていく。ここまで
来てしまえば、自分のテリトリーだ。有無を言わさず頂いてしまおうと橘高が意気込んで
いると、新井はひどく慌てて首を振った。
「ちょ、ちょっと待って!」
橘高がズボンに手を掛ける。その手を止めて、すかさず新井が叫んだ。
「あのさ・・・・・・」
上目使いに新井が橘高を覗き込む。
「何でしょう」
「ちょっと聞いていい?」
「どうぞ」
「これって、やっぱり・・・・・・」
「はい?」
「俺が、イントゥーされちゃうってことぉ〜?」
どこぞの芸能人みたいな口調で新井が言うと、橘高は表情一つ揺るがせずに頷いた。
「勿論です。それ以外考えられませんから」
「うそーん」
「そうですか?話の流れから言って、こっちの方が普通じゃないです?」
「想像してたのとちがーう」
新井は頭をぶんぶん振って叫んだ。
「ふうん?」
橘高は余裕の表情で新井を見下ろす。本当は、新井がどっちを想像していたか予想はついて
いたのだが、逃げられる事を恐れて、橘高はこの瞬間まで新井に確認しなかったのだ。
「でも、新井さん、吉沢課長とはどっちも想像できたんでしょ?」
「そうだけと、俺とキッタカッターなら俺はこっちの方かなって・・・」
そう言って新井は橘高の顔を指した。
「そうですか?俺の方が背も高いし、経験も豊富だし、何より俺、タチですし」
「で、でも・・・」
「大体、新井さんなんて『入れてください』って顔なんですよ」
「そうなの!?」
「ええ」
俺の中では、という台詞は心の中だけで呟いて橘高はごり押した。流されやすい新井も
流石に自分のケツの話になると多少は焦るようで、素直に頷いてはくれなかった。
橘高は新井の抵抗を受けながらもベルトを外し、スーツのズボンに手を掛けていく。
「ちょ、ちょっと待って!キッタカッター・・・・・・」
新井は、橘高が股間に置いた手を除けようと暴れた。その力をさらに上回って橘高は新井
の動きを封じた。
もがく新井に耳元で橘高が囁く。
「・・・・・・止めてもいいですけど、俺の名前、そろそろ『キッタカッター』は止めませんか」
「ほえ?」
「セクシーな顔して、そんなとぼけた名前口走られると、興奮していいのか萎えていいのか
分からなくなります」
「そ、そう?・・・・・・じゃあ・・・・・・キッタカターとか?あはは、ツッタカターみたい」
新井は自分の置かれた立場を忘れそうになりながら、新しい橘高のあだ名を考え始める。
どうやら新井は芸人が好きなようだ。
橘高はその思考をぶった切って、新井を現実の世界に引き戻した。
「いいんですよ、考えなくても。俺の名前は浬って言うんです。どうぞ、浬って呼んで
ください」
「え?浬?・・・えへへ・・・浬か・・・」
新井は何故か照れ笑いをした。
「かわいいなあ、もう」
橘高も馬鹿みたいにその照れ笑いを受け取った。橘高の笑顔に、新井も一瞬今までの攻防を
忘れそうになったが、すぐに自分の置かれた状況を思い出してもがき出す。
「待ってー、俺、自信ないし」
「大丈夫、痛みなんて永遠に続かないし、痛いのは1分で収まるって思ってればいいんです。
辛くなったら、深呼吸してください。それで何とかなりますから」
それじゃ陣痛だ。橘高は適当なことを言ってのけた。それでも新井はその言葉を信じそう
になっている。
「そ、そうなの・・・?」
「そうですよ。やってみないことには、新井さんの想像が正しいかどうかなんて判断付かない
のだから、とりあえず試してみちゃいましょう」
最後はわけの分からない理論で畳み掛けると、新井の抵抗を押しのけた。
「ふぅわぁあぁ〜〜〜」
気の抜けるような声を上げると、新井は橘高の頭を掴んだ。
「大丈夫です?」
「大丈夫じゃないよ〜、何、これっ」
「ただのフェラチオです」
「ただの?普通のってこと?!じゃあ俺が知ってるのは何?」
「それはご愁傷様です。今まで「当り」に出会わなかったんですね」
「キッタカッターは当りなんだ・・・」
「浬ですよ、新井さん」
「そうだった。浬、浬・・・えへへ・・・ふはあ!」
新井がぼけている間に橘高は再び新井の股間に顔を落とす。新井は小さく唸りながら橘高
の肩を掴んだ。
新井のペニスは橘高が想像していた通りで、やや小ぶりの形が口にフィットする。
べろりと根元から舐め上げ、頂上を吸い込むと、新井がぷるぷると震えた。
「はふぅ」
手を添えて擦りながら、舌で先を遊ぶ。舐めても舐めても、蜜が吹き出て、最後はじゅる
っと音を立てて啜った。
「はぁっ」
「可愛いなあ・・・もう」
ベッドサイドに膝を付いて、新井の股間に顔を埋めている光景なんて、会社の人間に絶対
見せられない。ましてや、新井の姿に骨抜きにされてるこの顔なんて、新井にだって見せ
るのが躊躇われるほどだ。
「だめんず」好きの自覚はあるけれど、ここまで新井を好きになってしまったのは一体
何故なのだろう。答えの出ない自問をしてみるが、いつもは見られない新井の姿に、そんな
ことはどうでもいいと、すぐに脳裏に追いやった。
好きなものは好きなのだ。仕事も駄目な上に妄想で突っ走る、ちょっと頭の弱い先輩が好き
でたまらないのだ。運動部で鍛えた身体も、小さめのペニスも、鼻にかかる声も、知れば
知るほど好きになってしまう。
橘高は新井の顔を見上げながら、ペニスに口をつける。顔を上下させて口の奥まで飲み込む
と、新井は気持ちよさそうに、口を開いた。
「ああっ・・・」
新井は段々挙動がおかしくなっている。気持ちよさに脳がやられてるのか、いつもの新井
の俊敏なボケっぷりは消え、その代わりとろりとした瞳で橘高を見下ろしていた。
「ったく、嫌になりますよ」
「へぇ?」
「こんな顔まで出来るなんて・・・」
今まで見たことのない新井の表情に橘高はクラクラする。口の中の動きは激しさを増し、
新井を更に追い立てた。
「かっ、浬っ・・・出ちゃう、よ」
恥ずかしそうに顔を振る新井に、橘高は頷いた。
「でもっ・・・」
新井の手に力が入る。やってきた射精感を止めようと悪あがきでもするように、橘高の肩を
叩いたり、顔を外そうとしているが、快楽の波の前ではそれもすぐに無駄になった。
けれど、飲み込まれていくのは橘高だ。こんな姿を目の当たりにして、冷静でいられる
はずがない。
「あっ、あっ・・・・・・浬!浬!」 最後は容赦なく、手まで使って扱くと新井はあっという間に果てた。
「はふ、はふ・・・・・・うぅ」
新井は肩で息を整えながら、掴んでいた橘高の頭を離した。
「ごっ、ごめっ・・・・・・ティ、ティッシュ!」
新井がベッドの周りを見渡してティッシュを見つけるよりも早く、橘高はゴクリと喉を
鳴らして、新井の放った液を飲み込んだ。
「うぇー!駄目!飲んじゃ駄目だって!」
新井がブルブルと首を振る。
「エスプレッソ!」
「え?」
「濃厚なので、少量でもガツンときますね」
そう評価すると、新井は喉を押さえて叫んだ。
「おえーっ」
「そんなに嫌がること無いじゃないですか、俺が飲んだだけの話ですよ。何も新井さんに
まで強制しませんって」
「喉、気持ち悪くない?・・・・・・あ、コーラならあるよ」
新井はベッドサイドに転がっていたペットボトルのコーラを差し出した。
「精液とコーラのコラボってどうなんでしょう・・・・・・」
益々カオスな味になりそうだ。けれど、想像しただけでノーサンキュといいたくなる申し
出を橘高はありがたく受けた。
「コーラ好きの新井さんの気持ち、少しは理解できますかね」
久しぶりに飲むコーラに、橘高は盛大に咽たのだった。
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